研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105716
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高尾 俊郎 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00313346)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クラスター / 芳香族化合物の活性化 / 炭素-水素結合活性化 / ルテニウム |
研究概要 |
三重架橋スルフィド配位子を有するポリヒドリドクラスターとベンゼンとの反応では三重架橋ベンザイン錯体が収率良く得られる.このベンザイン配位子はリジッドであるのに対し,さらにプロトン化することで生成するカチオン性錯体のベンザイン配位子はフラクショナルであり,2つのRu-Ru結合間でピボット運動を起こすことがNMR測定より明らかとなった.この柔軟な構造に由来するものと思われるが,カチオン政策体は水素雰囲気下,アセトン中の微量の水と反応し,三核のカチオン性イソプロポキシド錯体と66%の収率でフェノールを与えることが明らかとなった. 水素が存在しない場合にはカチオン性ベンザイン錯体と水との反応では49電子の架橋ヒドロキソ錯体が選択的に得られた.架橋ヒドロキソ錯体の構造は予備的ではあるが単結晶X線構造解析によって確認し、三重架橋ベンザイン配位子と架橋ヒドロキソ配位子を有する構造であることが明らかになった.常磁性の架橋ヒドロキソ錯体に水素を作用させることでフェノールが生成することは確認できたが,その生成量は12%とカチオン性錯体から得られた量と比べると少量であった.現段階では生成機構は不明だが,水との反応で生じる架橋ヒドロキソ種のヒドロキソ基がベンザイン配位子へ求核的に付加することによってC-O結合が生成したものと考えている. カチオン性ベンザイン錯体と等電子構造の平行配位型アルキン錯体を合成し,水素雰囲気下で水との反応を試みたが対応するヒドロキソ錯体もしくはアルコールの生成は観察されなかった.この結果はベンザイン配位子がフェニル基に変換されることに伴う芳香族性の回復が反応の駆動力になっていることを示唆するものと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベンゼン環への水酸基の導入のメカニズムは完全には明らかになっていないものの、カチオン性のベンザイン錯体が水と速やかに反応し、ヒドロキソ種を与えることが明らかとなった。ヒドロキソ中間体からの水素ラジカルの遊離によって常磁性種が精製したものと考えられるが、対応するアルキン錯体を用いることでC-O結合形成の過程についても明らかにできるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
三重架橋スルフィド錯体を先にプロトン化することで得られるカチオン性ヒドロスルフィド錯体の性質を明らかにし、ベンゼンとの反応について検討することで、反応を触媒的に進行させることに挑戦する。また、置換ベンゼンとの反応についてもあわせて検討することで、より反応の詳細を明らかにしていく。
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