研究実績の概要 |
通常遷移金属触媒を失活させてしまうことが多い、チオカルボニル基を含む芳香族化合物の炭素-水素直接アリール化反応を検討した。われわれがこれまで注目している[Pd(phen)2](PF6)2触媒は、配位子である1,10-フェナントロリンが触媒の失活経路になり得る、チオカルボニル基から遊離した硫化物イオンのパラジウムへの配位を抑制する効果や、チオカルボニル基そのものの分解反応を引き起こさない性質があるため、これまで達成できていなかった、目的の反応が達成できると考えた。実際期待する反応は進行し、非常に高い収率で対応するアリール化物を得ることができた。また、反応機構に注目し検討を進めたところ、これまで例を見ない、チオカルボニル基と芳香環の炭素が配位した構造を2つもつビスパラダサイクルが反応中間体として形成することが明らかにした。
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