公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
茶谷らはRu3(CO)12触媒を用いる脂肪族C-H結合の活性化による2-ピリジルメチルピバロイルアミド(1)のβ位選択的カルボニル化反応を報告している。我々は本反応の反応機構に興味を持ち、触媒の初期構造としてRu単核錯体Aを用いた分子軌道計算による解析を行った。結果は昨年度の報告書で報告し、現在論文執筆準備中である。茶谷らは触媒活性種についての知見を得るため、化学量論量の(1)とRu3(CO)12をトルエン中160℃で加熱して2核錯体Bを得、X線構造解析を行っている。錯体Bの各Ru原子は基質(1)がピリジン及びアミドの2つの窒素原子によりキレートされ、さらに他方のRu原子にキレートした(1)のアミド酸素が配位し、Ru-Ru結合も持つ強固な構造を持っている。B自体はresting formと考えられ、触媒活性種ではないが水の存在により活性体に変化しうる。本研究では錯体Bから活性種への変換がどのように可能であるのかに興味を持ち、DFT計算(B3LYP/6-31G*,Ru:lanld2z)による解析を行った。Bの加水分解反応はアミド窒素に水素が、隣のRuに結合したCO基にOHが結合することによっておこり、活性化エネルギーは33.7 kcal/molであった。160℃の反応温度が必要なのはこの加水分解反応のためであると考えられる。もう1分子の水も同様に反応してInt2となりRu-CO2H結合の回転、C-OH結合の回転が低い活性化エネルギーで起こった後、Ruに結合した2つのカルボキシル基から水が脱離して、一方はCOに戻り、もう一方はCO2配位子へ変化すると同時にRu-Ru結合の開裂も起こって錯体Int6へと変換される。この錯体にCOを近づけるとエステル酸素との配位子交換が自発的に起こりInt7となり、結合回転の後、水素結合が切れた後、COとエステル酸素との配位子交換により錯体Bは2つの単核錯体CとDへ変化することが分かった。尚、錯体C及びBはそれぞれエチレンとの反応により低い活性化エネルギーで錯体Aに変換できることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
ルテニウムカルボニル触媒Ru3(CO)12を用いる脂肪族C-H結合の活性化による2-ピリジルメチルピバロイルアミド(1)のβ位選択的カルボニル化反応の反応機構の解析に成功し、resting form錯体から活性触媒への変換の機構の解明に成功した。
C-H活性化反応は遷移金属触媒が基質の官能基に配位し、その近くのC-H結合を活性化して起こる。その際の基質官能基、遷移金属触媒の種類、反応位置などまだ不明の部分は多いが、その自在制御が可能となれば合成反応としての有用性は格段に増す。本研究では多くのC-H活性化機構の解明、活性触媒、不活性触媒の構造やそれらの相関を明らかにすることにより、反応の自在デザイン可能な合成法確立のための基礎研究となることを目指して研究を行う。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www1.gifu-u.ac.jp/~ando_ap/