研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105722
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
UYANIK Muhammet 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20452188)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 合成化学 / 有機化学 / 酸化的カップリング / 有機触媒 |
研究概要 |
本研究では、ヨウ素の合成的有効利用の確立を大きな目的とし、無機ヨウ素化合物を有機分子触媒に用いる環境調和型選択的カップリング反応の開拓研究を行っている。本年度は、第四級オニウムヨージド触媒と、過酸化水素等の共酸化剤を用いて、カルボニルやフェノール類をin situで調製される活性種(ヨウ素酸塩類)で活性化(酸化)し、適切な求核種と分子内若しくは分子間で反応させることによって、酸化的炭素-酸素及び炭素-窒素カップリング反応の開拓を行った。 1. 酸化的C-Oカップリング:tert-ブチルヒドロペロキシド(TBHP)又はクメンヒドロペルオキシド(CHP)存在下、触媒量のキラル第四級アンモニウムヨージドを用いて、生物活性物質に多く見られる2-アシルクロマン誘導体を高い不斉収率で定量的に得ることに成功した。本反応の触媒機構を UVやラマン分光を用いて調査したところ、活性種である不安定な次亜ヨウ素酸と不活性種である安定なトリヨージドの生成、更に塩基による活性種の再生を確認した。こうして塩基が本酸化的触媒サイクルの効率化に大きく影響することを見出し、触媒量の大幅な低減に成功した。 2. 酸化的C-Nカップリング:上記の化システムをケトンのα-イミド化反応に応用した。その結果、塩基存在下、触媒前駆体としてNaI、共酸化剤としてTBHPを用いることによって、対応するα-イミドケトンを高収率で得ることに成功した。また、本酸化システムをケトエステルのα-アジド化反応にも応用した。触媒前駆体としてBu4NI、アジド源として安価なNaN3、酸化剤として過酸化水素を用いることで、目的のα-アジド化体を高収率で得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. 触媒機構を調査することで活性種及び不活性鵜種の同定に成功した。 2. 無機塩基存在下、不活性種から活性種の再生にも成功し、触媒量の大幅な低減に成功した(TON>2000)。 3. 不斉酸化反応において非常に高いエナンチオ選択性(up to 95% ee)を達成できた。 4. 開発した反応を生物活性物質の合成に応用することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 酸化的C-Oカップリング:比較的難易度の高い脂肪族アルコールを求核剤に用いて、酸化的エーテル化反応の開発、及びフェノール類を反応剤に用い、脱芳香型酸化的C-Oカップリング反応の開発を行う。 2. 酸化的C-Nカップリング:フェノールをアニリンに置き換え、上記酸化システムを用いる酸化的C-Nカップリング反応の開拓を行う。本研究ではアニリンの保護基の選択が重要だと考えられる。また、この反応でもキラルなオニウムヨージドの設計を行い、不斉酸化的環化反応の開発も予定している。 3. 酸化的C-Cカップリング:本研究では、求核剤にアルケニルやアリール(Ar)基を用いて、カルボニル化合物やフェノール類との分子内及び分子間カップリング反応を開発る。アルケンとの反応では、生じるカルボカチオンを補足するために系内に第2の求核種を加えることで、三成分カップリング反応も可能である。このようなカップリング反応では基質の反応性や選択性が最も重要な課題になる。この際、基質が鍵となると考えられる。この研究では、最初は分子内カップリング反応を検討してから、分子間カップリング反応へと展開していく予定である
|