sp3炭素-水素結合の触媒的官能基化における新概念創出を目的として、ケイ素および他の元素の置換効果に基づくsp3炭素-水素結合の触媒的高効率変換手法の開発に取り組んだ。平成26年度は、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目3. 有機ケイ素化合物の触媒的sp3炭素-水素結合官能基化の開発」について検討を行った。イリジウム-フェナントロリン触媒を用いて、トリアルコキシ(メチル)シランの炭素-水素結合ホウ素化を検討したところ、目的とするケイ素上メチル基炭素-水素結合の変換と競争して、アルコキシ基末端炭素-水素結合の変換も進行することが明らかとなった。アルコキシ基の構造を精査した結果、立体的に嵩高いネオペンチルオキシ基を用いることにより、目的の変換を高選択的に進行させられることを見出した。また、官能性シリル基がα位炭素-水素結合に及ぼす置換効果は、クロロシリル基>アルコキシシリル基>アルキルシリル基、の順に低下することがわかった。触媒量の塩基性添加物は本基質の炭素-水素結合ホウ素化に有効であり、イリジウムに対してカリウムtert-ブトキシドを0.25当量用いた場合に最も高効率で反応が進行することを見出した。一方、イリジウムと等量、もしくはそれ以上の塩基性添加物が共存すると、触媒効率が低下することも明らかとなった。これらの知見は、sp3炭素-水素結合の効率的変換を実現する高性能触媒の設計・開発に資するものであり、これに基づいてアルキルケイ素化合物の多重ホウ素化や炭素-炭素および炭素-ヘテロ元素結合形成への応用を達成すべく、今後研究をさらに展開する予定である。
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