研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105729
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機化学 |
研究概要 |
有機ELや有機半導体などの機能性有機材料や、医薬品や農薬などの生理活性物質に代表される有用化合物の創成において、ヘテロ原子は化合物の機能や特性を決定づける上で大きな役割を担っている。したがって、従来の有機合成化学的手法では不可能であった形式によるヘテロ原子の有機化合物への導入を可能にする選択的・効率的分子変換反応の開発は、有機合成化学における大いなる挑戦であるとともに、複素環やヘテロ原子官能基に由来する機能や特性を発現する機能性有機材料や生理活性物質などの新たな標的化合物の設計・合成を可能にするものである。そこで申請者は、これまでの知見に基づき、今までの手法では分子変換反応に直接利用することが困難であった炭素―ヘテロ原子結合の新しい活性化法を創成し、これを鍵反応として触媒反応に組み込むことで炭素―炭素不飽和化合物のカルボアミノ化反応など代表されるカルボヘテロアトム化反応の開発に取り組んだ。その結果、環状カルボニル化合物の低原子価ニッケルへの酸化的付加および脱カルボニルを利用すれば、炭素―炭素不飽和化合物との環化付加反応により、複素環化合物が得られることを見出した。この反応は、カルボヘテロアトム化反応による、新しい形式の複素環合成法である。また、カルボニル化合物の遷移金属触媒への酸化的付加と脱カルボニルを鍵反応として活用して、炭素―ヘテロ原子結合の酸化的付加体等価体を反応系中で調製する手法は、脱カルボニルの代わりにβヘテロ原子脱離を鍵反応として利用することもできる。脱炭酸を鍵反応として酸化的付加体を調製すれば、高い位置および官能基選択性を有する環化付加反応への応用が可能である事を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者はニッケル触媒を用いたフタルイミドとアルキンの脱カルボニルを伴ったカルボアミノ化反応による環化付加反応を既に開発した。開発過程で、フタルイミドにおける窒素上の置換基によって、反応の形式が異なる事を見出した。つまり、アリール基が置換したフタルイミドを用いた場合には、環化付加反応によりイソキノロンが得られるに対して、ベンゾイル基が置換したフタルイミドを用いた場合には、全く予期していなかった形式の付加反応によりエナミンが得られることがわかった。今度の研究を進める上で極めて重要な予備的知見を得ることに成功した。そこで引き続き選択的にエナミン型付加体を与えるカルボアミノ化反応の条件検討を行う。具体的には、スルホニル基を配向基として用いる事により、ニッケルへの酸化的付加の位置制御による選択的付加反応を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ニッケル触媒を用いたフタルイミドとアルキンの脱カルボニルを伴ったビシナル型カルボアミノ化反応により、イソキノロンが得られることを既に報告しているが、この反応を嵩高いルイス酸であるMAD (Methy lalminium Bis (2,6-di-tert-buthyl-4-methylphenoxido) を添加して行う事により、ジェミナル型カルボアミノ化反応が立体選択的に進行するという事実を新たに見出した。この様なアルキンの同一炭素上にアミノ基と炭素置換基を同時に導入するジェミナル型カルボアミノ化反応は、これまでは実現が困難な課題であったため、他に例がない。本申請研究では、予備的知見に基づき、炭素―炭素不飽和化合物のジェミナル型カルボアミノ化反応の開発を検討する。具体的には、ニッケル触媒として用いる配位子やルイス酸を検討して、様々な炭素―炭素不飽和化合物を用いてもジェミナル型カルボアミノ化反応が進行することを明らかにする。また、この特異な分子変換法における反応機構を解明するために、反応中間体として考えられるニッケル錯体の合成単離およびX線単結晶構造解析を実施する。さらに、分子軌道計算による反応機構の考察を行う。
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