研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105730
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 貴洋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50335197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | C-H活性化 / 触媒反応 / 遷移金属 / イリジウム / 環化反応 / 不斉合成 |
研究概要 |
高い原子変換効率を目指すアトムエコノミーや合成ステップ数を最小にするステップエコノミーの概念は、目標化合物の合成計画における重要な戦略であり、その一つの手段として遷移金属錯体を使った触媒反応が精力的に研究されている。特に、遷移金属触媒によるC-H官能基化は、直截的分子変換反応の手法として重要である。本研究では、イリジウム触媒を用いた共役ジエンと芳香族イミン類の立体選択的[3 + 2]付加環化反応に関する研究を行った。 1.芳香族N-スルホニルケチミンと1,3-ジエンの[3 + 2]環化反応:イリジウム触媒存在下、環状N-スルホニルケチミンとイソプレンをトルエン中で反応させると1-アミノインダン誘導体が高い収率で得られた。反応系中で発生させるカチオン性イリジウム触媒と塩基(DABCO)の存在が反応に不可欠であり、配位子としてキレートできるジエンが有効であった。本反応では、反応に関与するアルケン部位の位置選択性と生成物の立体選択性は非常に高い。 2.芳香族N-アシルケチミンと1,3-ジエンの不斉[3 + 2]環化反応:3-アリール-3-ヒドロキシイソインドリン-1-オンから生じるN-アシルケチミンもC-H活性化を経る1,3-ジエンとの環化反応によってアミノインダン誘導体を与えることが明らかになった。本反応では、テトラフルオロベンゾバレレン骨格を持つキラルジエン配位子(Me-tfb*)を用いて反応を行うと、反応に関与するアルケン部位の位置選択性、生成物のジアステレオ選択性およびエナンチオ選択性ともに高い環化生成物が効率的に得られた。反応に適用できる1,3-ジエンの種類も多く、多置換アルケン部位も反応する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り,C-H結合の切断を伴う分子活性化による有機金属活性種の発生と高原子効率型の環化反応への応用として,イリジウム触媒を用いたケチミンへと1,3-ジエンの環化反応を開発した。また,不斉配位子を用いたC-H活性化をへる環化反応の開発も行い、高い立体選択性を達成した。その結果は学術誌に掲載された(Chem. Sci. 2013, 4, 4499).この論文はSynfacts 2014, 10, 157にSynfact of the monthとして掲載された。一方、従来の反応系では反応性が低かった芳香族アルジミンに有効な触媒系をごく最近見つけた。さらに、芳香族ケチミンはイリジウム触媒下、アルキンとも環化反応を起こすことが明らかになりつつある。継続して研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、これまで得られた知見を元にイリジウム触媒を用いた次の反応開発を行う。(1)C-H活性化を伴う芳香族アルジミンとジエンとの環化反応:従来の反応系では反応性に乏しかったアルジミンの環化を行う。(2)イミンとアルキンまたはエンインとの環化反応:反応の位置および立体選択性を調べる。(3)1,3-ジエンを用いたヘテロ環合成:有機イリジウム種と1,3-ジエンとの反応では,酸化的環化および還元的脱離を経てアミノ基を持つ炭素五員環骨格が形成されることがこれまで明らかになっている.同様の反応形式がアルコキソイリジウムやアミドイリジウム種に適用できれば,ヘテロ環構築が可能となる.そこで,イミン部位の窒素が配位したヘテロ原子と結合を持つイリジウム種を発生させ,1,3-ジエンとの反応によりヘテロ環を合成する反応系の開発を行う.
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