研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105732
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80293843)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イリジウム触媒 / 脱水素化反応 / 機能性配位子 / 水素 / アルコール |
研究概要 |
本研究は、研究代表者がこれまでに明らかにしてきた遷移金属と機能性配位子の協奏が生み出す反応場における脱水素化反応をより高度に発展させ、メタノールをはじめとする低級アルコールと水の混合物から高効率的に水素を生成する新しい触媒系を開発することを目的として遂行している。 本年度はまず、ビピリドナート系機能性配位子とヒドロキソ配位子を有するアニオン性の新規イリジウム錯体を合成し、その構造を単結晶X線構造解析によって明らかにした。なお、本新規錯体は水に対する高い溶解性を示し、水溶媒中で長期間安定に存在した。 続いて、上記の新規錯体を触媒として用い、メタノール水溶液からの水素生成反応について検討した。まず、0.5 mol%の錯体触媒の存在下、メタノール水溶液を加熱還流条件下で20時間反応させると、収率10%で水素と二酸化炭素の混合ガス(3:1)が得られた。次に、0.5 mol%の水酸化ナトリウムを添加して同様の反応を行うと効率が大幅に改善し、収率は84%へと向上した。 本触媒反応では、i)メタノールの脱水素化によるホルムアルデヒドの生成、ii)ホルムアルデヒドの水和によるヘミアセタールの生成、iii)ヘミアセタールの脱水素化によるギ酸の生成、iv)ギ酸の分解による水素と二酸化炭素の生成、という四段階を経て水素と二酸化炭素が3:1の比で生成したと考えられる。 本触媒反応は、メタノール水溶液を加熱還流する100 ℃以下の条件で水素の効率的な生成を達成したものであり、不均一系触媒を用いる一般的な水蒸気改質よりも格段に穏やかな条件下で実施できることが特長である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初の研究実施計画は、(1) 機能性配位子を有する新しい高活性イリジウム錯体触媒の設計と合成、(2) メタノールと水の混合物からの高効率的な水素生成触媒系の開発であった。このうち、(1)については当初の計画どおりに新規錯体触媒を合成することに成功した。また、(2)についても、効率的に水素を生成する反応条件を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も当初の研究実施計画にしたがって遂行していくが、特に「水素の発生をともなったカルボン酸の環境調和型合成法の開発」を重点的に検討する。 アルコールを原料とするカルボン酸合成は通常、有害な酸化剤を量論量以上に用いて行われるため、酸化剤を用いることなく水素の発生をともなって達成できれば、極めて大きな意義があると見込まれる。
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