研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105733
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40273586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭素ー水素結合活性化 / ロジウム触媒 / 酸化的カップリング / カルボン酸 |
研究概要 |
炭素-水素および炭素-炭素結合切断を経る触媒的炭素-炭素結合形成反応は、本領域研究の目指す直截的物質変換の中核に位置づけられ、アトムおよびステップエコノミーの観点から有望な有機合成手法として注目されている。そのような反応は、炭素-炭素結合形成法としてこれまで汎用されてきたクロスカップリング反応に比べ、反応工程数および副生物の大幅な低減をもたらす。ユビキタスな炭素-水素あるいは炭素-炭素結合を、位置選択的に切断するための最も有力な手法として、配向基を利用したオルトメタル化を経る反応が挙げられる。我々はこれまでに、カルボキシル基を配向基とし、その近傍でのアリール化やビニル化を効率よく行うことに成功している。本研究では、これまで継続して開発してきたロジウム触媒系を駆使してカルボン酸類の新規誘導体化法について検討を行う中で、入手容易なマレイン酸類とアルキンおよびアルケンとの酸化的カップリングが、脱炭酸を伴って効率よく進行することを見出した。さらに類似の触媒系を用いたフェニルホスフィン酸類の反応についても報告する。 まず三価Cp*ロジウム触媒および酸化剤として銀塩を用いる条件で、マレイン酸をアルキンとともに反応させると、脱炭酸を伴う直截酸化的カップリングが効率よく進行し、対応するα-ピロン誘導体が生成することを見出した。さらにアルケンとの反応では、環化を伴うことなくカップリングが進行し、鎖状のジエンカルボン酸誘導体を選択的に与えた。 さらに、同様のロジウム触媒系を用いると、含リン官能基を配向基とする直截カップリングが円滑に行えることも見出した。例えばジフェニルホスフィン酸とアルキンとの 反応では、P-OH 配向基のオルト位の炭素―水素結合切断を伴って効率よく酸化的カップリングが進行し、ホスファイソクマリン誘導体を高収率で与えることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロジウム触媒を用いる直截カップリングにおいて、カルボキシル基に加えて、ホスフィノキシ基のような含リン官能基も配向基としてうまく機能することを見出した。これを利用することで、sp3炭素ー水素結合を始めとする不活性結合の誘導体化も可能になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでロジウム、ルテニウム、およびパラジウム等の遷移金属触媒を用いた様々な基質の酸化的カップリングについて検討を行い、それぞれの触媒系に関する情報を蓄積してきた。今後、その特徴を活かし、カルボキシル基、ホスフィノキシ基、および関連する配向基を利用する幅広い炭素―水素結合の直截誘導体化法を開発する。
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