研究実績の概要 |
本研究では、有機化合物を構成する単結合の中で、最も強固な結合である炭素―フッ素結合および酸素結合の切断を伴う新規な合成反応の開発を目指している。前年度は、コバルト及びロジウムを触媒として用いる事により、様々なフッ化アルキル及びビニルエーテルを基質とするクロスカップリング反応を開発した。本年度は、グリニャール試薬共存下、銅或いはニッケルを触媒として用いた含フッ素化合物の反応を検討した。 前年度の成果を基に、求電子剤としてパーフルオロアレーン類を用いてグリニャール試薬とブタジエンとの反応を検討した。その結果、銅触媒存在下、1,3-ブタジエン、1級アルキルグリニャール試薬との反応により、パーフルオロアレーン類の炭素―フッ素結合の切断を伴ったブタジエンのヒドロパーフルオロアリール化反応が進行することを見出した。この反応では、グリニャール試薬のβ水素が生成物に導入される。一方、2級および3級アルキルグリニャール試薬を用いた場合には、ブタジエンへのアルキルパーフルオロアリール化反応が進行した。 一方、ニッケル触媒存在下、アリールグリニャール試薬を用いた場合には、ブタジエンの二量化を伴ったアリールパーフルオロアリール化反応が進行し、アリール基およびパーフルオロアリール基がそれぞれ8および3位に導入された1,6-オクタジエン類が位置選択的に得られた。アルキルグリニャール試薬を用いた場合には、アルキルグリニャール試薬を水素源とするヒドロアリール化反応が進行し、3位にパーフルオロアリール基を有する1,7-オクタジエンが得られた。さらに、β水素を持たないグリニャール試薬についても検討を行ったところ、アルキル基が8位に導入された生成物とともに、環化反応を伴った多置換シクロペンタン誘導体が得られることを見出した。
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