反応触媒として、金属触媒は非常に重要であり、様々な触媒の開発と触媒機能の制御法の開発が行われている。本研究では、芳香族化合物を選択的に認識し、活性化するπポケット反応場を有する金属錯体の合成と触媒反応への応用を検討した。芳香族選択性向上を指向したπ骨格の修飾を行った結果、かご錯体の有機骨格部位の芳香環上に電子求引性基であるシアノ基やトリフルオロメチル基、フルオロ基を導入することにより、芳香族化合物の認識能が格段に向上することを見出した。芳香族化合物に関しても、電子求引基を有する基質は有さない基質に比べて、πポケットに認識される効率が向上したため、πポケット反応場がπーπ相互作用により芳香族選択性を発現していると推測している。また、ベンゼン環をナフチル環へと変えることでも認識能が向上した。さらに、認識能には、ナフチル環の配置が重要でありπポケット反応場の形状が認識能に与える影響についての知見が得られた。また、かご型錯体の中心金属をホウ素からアルミニウムへと代えることに成功した。アルミニウムはホウ素に比べてルイス酸性が高いために、触媒活性の向上と芳香族化合物選択性の向上が期待される。実際に合成したアルミニウム錯体を向山アルドール反応に使用し、芳香族選択性をホウ素錯体と比較したところ、選択性と収率が向上した。以上のように、かご型錯体におけるπポケット反応場に対する、置換基効果や形状の変化による影響、中心金属の影響など多角的に検討を行った。
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