研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105736
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生越 専介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30252589)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 触媒反応 / 有機金属錯体 / 炭素-炭素結合生成 |
研究概要 |
過去に我々が報告したニッケル触媒による[2+2]環化付加において、単純アルケンを反応させるには大過剰のアルケンを必要とし、また得られる生成物はレジオ異性体混合物であっ た。 一方、コバルト触媒を用いたアルケンとアルキンとの反応では共二量化体であるジエンを与える。この反応も酸化的環化により生じる環状コバルト中間体を経由して進行していることが提唱されている。コバルトを用いての触媒反応は、ニッケルを用いての触媒反応よりも温和な条件で反応が進行する。2 このような背景の元、ニッケルの場合と同様に、コバルト触媒を用いた場合にも1,3-エンインを用いることでη3-ブタジエニル配位による反応の制御が可能であると考え、非活性アルケンと 1,3-エンインとの酸化的環化により生じるη3-ブタジエニル環状コバルト錯体の形成を鍵としたシクロブテン類の合成方法の開発を目指した。 CoBr2(10 mol%)、DPPP (10 mol%)、Zn dust (40 mol%)およひ ZnI2 (40 mol%)存在下、スチレンと1-メチルヘキセ-1-エン-3-インとを CH2Cl2中室温にて反応させたところ目的とするシクロブテン誘導体が収率 78%で得られた。ニッケル触媒を用いる反応とは対照的に、本反応は室温にて進行した。本反応は、4位の置換基に対しての許容範囲は大きくメチル基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素等に対していずれも良好な収率にて目的とするシクロブテン類を与えた。3位に関しては、メチル基の場合は収率が高いものの、フッ素やトリフルオロメチル基の場合には収率の低下が見られた。2位に置換基がある場合には、メチル基では低収率となるが、塩素やメトキシ基では収率が高くなる傾向があった。これは、反応系中においてコバルトに配位するために収率が向上したものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題名は、「歪み分子シクロブテン類の効率合成を実現する反応場構築」であり、本年度の達成目標は、単純アルキンを基質として用いることのできるアルケン類の開発を目的としている。本目的の達成のためには、多様なアルケンを用いてシクロブテンが合成できることが必須である。この点において、これまで用いていたニッケルは、十分な基質適用範囲を有しているとは考えにくい。そこで、本年度はより広い基質適用範囲が期待されるコバルトを触媒として、アルケンの基質適用範囲の拡大を目指して検討を行ってきた。その結果、ニッケルを用いた反応系においては不可能であったスチレン誘導体を用いての反応が可能となった。これは、コバルトを触媒として持ち入れば、スチレン類を基質として利用できる事が明らかになっただけではなく、配位子に導入するアルケン部位はスチレン類よりも反応性の低いアルケニルであれば利用できることも同時に明らかになった。これは、研究課題の目標達成のためには有効な情報であり研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた知見を基に、シクロブテン環の生成により有利な配位子と中心金属との組み合わせを見いだすと共により一般的なシクロブテン合成法となる反応の開発を行う。また、アルケン上の基質の持つ置換基の大きさが環化反応に及ぼす影響を見積もる。これらの情報によりより有効な配位子の設計を行う。また、本計画で検討した配位子を用いて、より有効な反応条件の検討を行う。さらに、新しい配位子であるために、新しい反応が進行する可能性も秘めており、新反応の開発についても検討する予定である。 また、生成物には複数の不斉炭素が含まれており、不斉配位子を用いて反応を検討することで光学活性なシクロブテン類の合成も可能になると考えられる。この可能性を検討するために、10種類以上の不斉NHC配位子の合成も行う。
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