研究実績の概要 |
含窒素環状有機化合物は種々の天然物や生理活性物質によく見られる化合物群で有り、その合成法は古くから活発に研究されており、数多くの有効な手法が確立されている。しかしながら、従来法では効率よく合成が出来なかった化合物や多段階を要する化合物も数多く存在しているのも事実である。このような背景のもと、本研究では0価ニッケルに対してイミン類がη2配位することを利用して、アルキンとイミンとニッケルとの酸化的環化反応により生じる5員環アザニッケル錯体を反応中間体とする触媒反応の開発を検討した。 単離した5員環アザニッケラサイクルと一酸化炭素との反応においては、一酸化炭素の挿入と続く還元的脱離が室温に置いても容易に進行し対応するラクタムが得られる。しかしながら、副生するニッケルカルボニル錯体が安定過ぎるためにこの段階において触媒が失活してしまう。そのために、ニッケルを触媒とするカルボニル反応の構築は極めて困難であると考えられてきた。実際に、ニッケルを触媒とする環化カルボニル化反応は報告されていない。しかし、理論的には、反応系中での一酸化炭素の濃度を触媒量以下に制御することでカルボニル化は可能であるが、実際の実験においては精密な濃度制御が困難である。そこで、ギ酸フェニルとトリエチルアミンとの反応により一酸化炭素を反応系中で発生させることで濃度制御を行い、5員環アザニッケラサイクルを鍵中間体とする環化カルボニル化反応の構築を検討した。3,4量論反応においてカルボニル化反応の効率のよい溶媒は、短時間で一酸化炭素を発生させるために触媒反応構築には不向きであったため、一酸化炭素の発生速度の低い溶媒であるトルエンを溶媒として用いる事で触媒反応へと展開する事に成功した。アルキン以外にも、ノルボルネン類を基質として用いても環化カルボニル化反応は効率よく進行する。
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