研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105737
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
森本 積 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (10324972)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結合活性化 / 触媒反応 / カルボニル化 / アルデヒド |
研究概要 |
本研究では、ホルムアルデヒド、ギ酸、単糖類など入手容易な炭素資源が共通して有するホルミル炭素-水素結合に着目し、その結合の遷移金属錯体による新規活性化法の創出、および、それを基軸とした新しい分子変換反応の開発を目的とした。 1.ホルムアルデヒドのホルミル結合の活性を基軸とした、アルキン類のアリール化ダブルカルボニル化反応を開発した。ジフェニルアセチレンを、ロジウム触媒存在下でアリールボロン酸およびパラホルムアルデヒドと反応させることにより、高収率でブテノリド誘導体を合成できた。触媒的活性化により、パラホルムアルデヒドから発生したホルムアルデヒドが一酸化炭素と化学的に等価に働くことを明らかとした。本活性化を高効率に進行させる触媒条件を設計することにより、カルボニル単位を2つ導入させることに成功した。 2.ホルムアルデヒドの活性化を基軸とした、エンイン類の環化カルボニル化を穏和な条件下で実施できる合成手法を確立した。ホルムアルデヒドの活性化、および、活性化により発生させたカルボニル単位の導入、これら2過程それぞれを高効率に触媒する遷移金属触媒を同時に用いることにより、従来法よりはるかに低温下で実施できる合成反応となった。 3.アルキンおよびアレン部位を併せ持つアレン-イン類とホルムアルデヒドとのロジウム触媒反応において、水中で反応を実施することにより従来型の環化カルボニル化ではなく、形式的に環化ヒドロホルミル化が進行することを新たに見出した。本触媒反応は、ホルムアルデヒドの全く新しい化学変換を経る利用法となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルムアルデヒドを対象とし、遷移金属触媒を用いた新規活性化、ホルミルC-H結合の切断を基軸とした活性化を利用して、カルボニル化合物の新規合成法を開発することに成功した。研究目的通り、この活性化を経たカルボニル単位の発生が可能であることを明らかにした。さらに、そのカルボニル単位を、活性化と同一の触媒、あるいは、共存させた別の遷移金属触媒の作用により種々の有機基質へ導入することに成功し、様々なカルボニル化合物の合成を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
糖類がホルミル官能基を有する構造であることに着目し、研究対象をバイオマス由来の炭素資源である多糖類(セルロース、デンプン)へ拡大し、合成化学分野のおけるバイオマス資源の積極的な利用法として確立する。また、これまでの成果で得られた知見を活用し、二酸化炭素をホルミル化合物へ変換しながら、同時に本研究目的である活性化法に付すことにより、各種カルボニル化合物合成における炭素源としての新利用法の開発を計画している。
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