公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究課題では、金属酸化物上に貴金属ナノ粒子を担持したものから酸化物担体由来の活性種を発生させ、様々な有機合成反応に利用することを目的とする。具体的には担体金属にニッケルを用い、それより生じるニッケル活性種の利用を中心として研究を行う。これまでの研究から、金ナノ粒子とニッケル担体の組み合わせの場合には、調製法や処理の違いにより触媒活性が変化することがわかっている。例えばヨウ化アリールのアルコキシカルボニル化では、共沈法による調製ののち空気焼成したものに比べ、水素気流下で還元することにより金とニッケルが合金化したものの方が高い活性を示す。調製法と触媒構造や表面特性の関連性を解明することは、それぞれの触媒が効率よく働くことができる有機合成反応を選択する上で重要な知見となるため、平成25年度はその解明を主目的として研究を進めた。触媒構造の解析は、透過型電子顕微鏡 (TEM)、X線光電子分光 (XPS)、X線回折 (XRD)などを用いて行った。TEM測定によると、空気焼成を行った触媒では酸化ニッケル上に金がナノ粒子化して担持されていたが、合金化した触媒では金の粒子は観察されなかった。また、SPring-8においてX線吸収微細構造解析 (XAFS)を行うことにより、金およびニッケルの価数や、触媒構造について詳細な情報を得ることができ、調製法の違いが触媒構造の大きな変化につながることが見いだされた。以上のように、ニッケル担持金ナノ粒子を触媒とした有機合成反応と触媒の表面特性について一定の結果が得られ、概ね研究計画通りの進展が見られた。今後は表面構造や特性を基に、適切な有機合成反応への適用を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通り、触媒の調製法により表面構造が異なることについて、透過型電子顕微鏡 (TEM)、X線光電子分光 (XPS)、X線回折 (XRD)などの測定から知見を得ることができた。表面化学的特性の解明と並行して、有機合成反応への適用についても予備検討を行ったが、現時点では満足のいく結果は得られていない。当初の研究計画では有機合成反応に関する検討は主に平成26年度に行う予定であったため、研究計画への大きな影響はなく、次年度の主な検討課題である。以上のように、研究計画全体としては概ね順調に進行している。
2年目となる平成26年度には、調製した触媒の有機合成反応への適用を中心に検討していく。本触媒系ならではの新規反応の開拓に結びつくことが理想的ではあるが、触媒構造や表面特性の違いが各種有機合成反応の成否に与える影響について情報が得られれば、学術的な意義は大きいと考えられるため、候補となる有機反応は特に限定せず幅広く検討していく。また、当初の研究計画に挙げている金-ニッケル触媒系のみについての検討では、有用反応の発見に至らない可能性を考慮して、貴金属成分を変更した触媒、例えばパラジウム-ニッケルや白金-ニッケルなどの組み合わせでも触媒を調製し、それらの表面化学的解析なども行っていく予定である。これにより、金属成分が異なる場合の比較も可能となり、研究課題の方向性を大きく広げることができるようになると考えられる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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