研究概要 |
環状アルケニル炭酸エステルを用いて芳香族化合物との反応を行うことで、脱炭酸を伴うオルト位選択的なα-アシルアルキル基の導入反応が進行し、α-アリールケトンが生成することを見出した。α-アリールケトンの合成法については現在までに多くの例が知られているが、分子間での芳香族炭素-水素結合の直接官能基化によるα-アリールケトンの合成例は極めて限定的であり、本反応は遷移金属触媒によるベンゼン環の炭素-水素結合切断を経るα-アリールケトンの新しい合成法といえる。 アルケニルエステルを用いた反応の条件を参考にし、3-(2-フェニル)ピコリンと4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの反応を、Ru(cod)(cot)触媒を用いてメシチレン中150℃で行うと、オルト位にアシルアルキル基が導入された生成物が収率25%で得られた。この結果は、環状アルケニル炭酸エステルを用いれば脱炭酸を伴って炭素-炭素結合生成が進行し、オルト位選択的に極性官能基をもつアルキル基の導入が可能であることを示している。 本アルケニル化反応は、アリールオキサゾリン類を用いることも可能であった。2-トリルオキサゾリンを用い4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンとの反応を同条件で行った場合には、興味深いことにフェニルピリジンを用いた場合と逆の位置選択性で炭素-炭素結合生成が選択的に進行し、対応する生成物がGC収率41%で得られた。 平成25年度の検討により、炭素-水素結合切断を利用したベンゼン環へのアシルアルキル基の導入を可能にする新規触媒反応の開発が達成できた。
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