研究概要 |
P行列上の線形相補性問題(PLCP)は解の一意性という良い性質を持つことから,その計算量は注目を集め,[Megiddo (1998)]以来継続的に研究されてきた。2009年にK行列(非対角要素が負であるP行列)上のLCPが行列サイズnに対して線形回O(n)の反復で解けるというブレークスルー[Foniok, Fukuda, Gaertner, Luthi (2009)]が訪れた。本研究課題では,線形回の反復を達成するPLCPの行列クラスをK行列から拡大し,PLCPの計算量の限界を探求するとともに,PLCPを内包する問題における計算限界を解明することを目指している。本年度は,申請時に記載した通り,以下3点について研究を進めた。 (a)PLCP向きづけを実現する行列を列挙する手法を確立: 行列での実現については,応募者が積み上げてきた有向グラフの一般化である離散構造の有向マトロイドに関する実現可能性判定の研究を土台として,PLCP向きづけを実現する行列を列挙する手法の確立を目指した。 (b)低次元PLCP向きづけにおける部分クラスの解析: PLCP向きづけの部分クラスの解析を可能にするため,3次元PLCP向きづけの列挙[Stickney, Watson (1978)]および4次元PLCP向きづけの列挙[Fukuda, Lorenz, Miyata (準備中)]を対象に,主要な部分クラスを列挙した。 (c)PLCP向きづけの部分クラス(γ)を実現する行列クラスの解明: (b)で列挙した部分クラス(γ)の向きづけに対して,(a)で提案したPLCPグラフを実現する行列を与える手法を適用し,部分クラス(γ)を実現する行列を列挙した。K行列ではない特定の行列から(γ)が得られることを理論的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に進めた以下3点の研究について具体的に記す。 (a)PLCP向きづけを実現する行列を列挙する手法を確率: 本年度に実現した行列生成法は,低次元PLCP向き付けを一般化した手法であったが,一般次元で成り立つ手法であることから概ね順調な達成と言える。 (b)低次元PLCP向きづけにおける部分クラスの解析: 3次元PLCP向きづけの列挙[Stickney, Watson (1978)]および4次元PLCP向きづけの列挙[Fukuda, Lorenz, Miyata (準備中)]を対象に,主要な部分クラスを列挙したことから,順調な達成と言える。 (c)PLCP向きづけの部分クラス(γ)を実現する行列クラスの解明: (b)で列挙した部分クラス(γ)の向きづけを実現する行列を列挙することで,K行列ではない特定の行列から(γ)が得られることを理論的に示した。K行列ではない特定の行列を与える初めての生成法であり,順調な達成と言える。
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