研究領域 | 気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 |
研究課題/領域番号 |
25106706
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 真 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00225343)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エアロゾル / 雲 |
研究概要 |
本研究では、新学術領域研究「中緯度海洋と気候」の計画研究の集中観測の一環としてH25年の夏に実施されるJAMSTECの研究船による黒潮続流での船舶観測に同期して、航空機によりエアロゾルと下層雲の観測を実施するという、初めての船舶・航空機同時観測を実施する。この観測によりSSTのエアロゾル間接効果への影響を一般化かつ定量化することを目指す。本研究ではさらに領域3次元数値モデルWRF-chemの計算により、この海洋前線帯において形成される雲へのSSTの影響を調べる。高いSSTを取り除いた数値実験などにより、SSTの下層雲のマクロ量(雲の厚さなど)への影響と、ミクロ量(雲粒数濃度、エアロゾルの間接効果)への影響を調べる。 H25度は当初計画どおり、計画研究の集中観測でH25年の夏に実施されたJAMSTECの研究船“かいよう”による黒潮続流での船舶観測に同期して、航空機によりエアロゾルと下層雲の観測を実施した。船舶からは水温前線を南北に横切る航路において、ラジオゾンデやシーロメータ等による気象観測が実施された。観測機からは、船舶の航路付近での下層雲および雲底下のエアロゾルの観測をした。初期的な解析によると、船舶との同時観測は南からの暖気移流場において実施され、暖水側での下層雲を中心に観測されたことがわかった。この時の累積モードのエアロゾル濃度は100-500個/cm3、各レベル高度の最大雲粒数濃度は100-300個/cm3と、人為起源エアロゾルの影響を強く受けた春季東シナ海と比較して1/5程度の濃度となっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度は当初計画どおりに、黒潮続流域においてJAMSTECの研究船“かいよう”と同期した航空機観測を実施することができた。事前の周到な準備の結果、観測飛行においては観測船と無事に海上で落ち合うことができ、同時観測により学術上極めて貴重なデータの取得に成功した。現在この観測結果の解析を進めるとともに、人工衛星データの解析や数値モデル計算の準備などを進めている。このように本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度(H25年)の夏にJAMSTECの研究船“かいよう”と同時に航空機観測を実施した、黒潮続流域の下層雲とエアロゾルについての観測データの解析を実施する。2009年に実施された春季の黒潮域で観測されたデータとも比較しながら、海表面温度と大気最下層気温との差が、エアロゾルの雲粒への活性化にどのような影響を与えていたかを明らかとする。 本年度はまた、黒潮という高い海表面温度(SST)が与えるエアロゾル-雲相互作用をより一般的に調べるために、人工衛星データを用いた解析も実施する。航空機観測から得られた知見をもとに、SSTと海表面気温(SAT)との差(SST-SAT)およびエアロゾル量の指標(エアロゾルの光学的厚み、AOD)をパラメータとして、雲粒数濃度への影響を評価する。SSTの影響が強く出ると期待される冬季の黒潮域に注目し、5年間程度のデータを解析することにより、SSTの影響を定量化する。人工衛星データとしては、MODISを用いる。 本年度はさらに領域3次元数値モデルWRF-chemを用いて、エアロゾルおよびSSTの雲物理量への影響評価を試みる。
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