研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107501
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三澤 弘明 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局在プラズモン / 人工光合成 / 水の酸化 / 時間分解 / 光電子顕微鏡 |
研究概要 |
平成25年度は、金ナノ構造を配置したチタン酸ストロンチウム単結晶基板を用いて、水の光分解システムを構築した。0.05wt%のニオブをドープしたチタン酸ストロンチウム単結晶基板の表面に波長600 nm付近にプラズモン共鳴を示す金ナノ粒子を作製し、基板の裏面に水素発生の助触媒として白金板をIn-Ga合金によるオーミック接触を介して固定した。反応セルの中央に基板を設置して2つの反応漕に分割し、水素と酸素発生をそれぞれの反応漕で行い、水素と酸素を分離して取り出すことを可能にした。金ナノ微粒子を有する基板表面に任意の波長・強度の可視光を照射し、GC-MSにより生成したガスを定量したところ、水素・酸素発生量は光照射時間に比例し、可視光照射において化学量論的に水の光分解が誘起されることが明らかになった。なお、本反応系の化学バイアスはpHにより制御した。水素発生のアクションスペクトルはプラズモン共鳴スペクトルの形状と一致し、プラズモン共鳴に基づく電荷分離によって水の光分解が誘起されることを確認した。また、pH依存性の実験から最小で220 mVのバイアスによっても水の光分解が誘起されることを明らかにし、プラズモンを用いた高効率な水の光分解システムが構築された。一方、金ナノ構造と酸化チタン電極界面の構造が光電流の発生や水分解反応に与える影響を明らかにするため、透過電子顕微鏡を用いて電極界面の構造を評価したところ、金ナノ構造が数nmでも基板表面に密着していない場合は光電流の発生や水分解反応が誘起されないことを明らかにした。さらに、時間分解光電子顕微鏡を用いて光電子が放出されるホットサイトを高分解能で検出するとともに、プラズモンの位相緩和時間も高精度に測定することに成功し、プラズモン増強場における水分解反応の原理を明らかにするための実験系が構築された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は、金ナノ構造を配置した酸化チタンなどの酸化物半導体電極を用いて光電気化学測定を行い、酸素発生を定量すること、透過電子顕微鏡を用いて界面の構造を解析すること、そして時間分解光電子顕微鏡を用いて光電場強度分布の可視化やプラズモンの緩和時間について明らかにすることを目標としていた。実際には、これらの研究項目をすべて達成するとともに、外部電気化学測定装置を必要とせず、しかも水素と酸素を分離して取り出すことが可能な可視光水分解システムを構築することに成功した。さらに、波長600 nmの可視光照射でも単一の光触媒反応系において最も低い220 mVのバイアスで水の光分解が達成されることを明らかにした。したがって、本研究は、当初の計画以上に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度において得られた設計指針を基に、半導体に対する金属ナノ構造の最適な配置を行うとともに、原子層堆積装置やパルスレーザーデポジション装置を用いて結晶構造制御や不純物ドープによる電子状態を制御した半導体電極基板を作製し、光電変換特性および水分解特性を検討する。また、酸化チタンやチタン酸ストロンチウムだけではなく、室化ガリウムなどの半導体電極を用い、水の光分解による水素、酸素発生を評価し、人工光合成系として最適な半導体基板の選択を行う。
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