研究概要 |
本研究では, 有機p/n接合体を適用した水素発生用光触媒システムの設計・開発に関する検討を行った. まず, ペリレン誘導体(PTCBI, n型半導体)/コバルトフタロシアニン(CoPc, p型半導体)系を適用した水素発生用光触媒システムについて検討した. 可視光照射下でフィルム内部における光物理過程を介してCoPc/水界面に酸化力が生じるため, そこでチオール酸化を誘起するとともに, PTCBI上に生じた還元力により水素発生が起こることを確認した. 水素発生に対する外部量子収率(EQE)の照射波長依存性を調べたところ, 400~750 nmの可視全域の光エネルギーの利用により水素が生じることが明らかとなった. いわゆる有機光触媒システムの特長は長波長域の可視光に対しても活性を発現する点にあり, 上記の系は700 nmにおいてもEQE約6%と我々の例の中でも最も高い活性を示した. これはホールドープされたCoPcがチオール酸化に対して非常に活性であることが一因と考えられる. また, 無金属フタロシアニン(H2Pc, p型半導体)/フラーレン(C60, n型半導体)系はC60表面に白金触媒を担持した条件で水素をもたらす光カソードとして機能することをこれまで明らかにしており, これを酸素発生用光アノード(PTCBI/CoPc系)と組み合わせて, バイアス電圧を印加した条件で水の光分解を検討した. 現状ではケミカルバイアスも投入した系となっているがそれを差し引いても, 光エネルギーによってアシストされた水の光分解が0.3 Vのバイアス電圧下で起こることを確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
新規な系の探索と並行して, 今回報告した二種類の系の最適化に関する検討を進め, 各系の高効率化を図る. さらに, 本領域のスローガンでもある異分野融合の観点から実施している本領域内共同研究:「水素発生用有機・無機ハイブリッド光触媒システムの開発」も推進していく. また, 平成25年度と同様のスタンスで, 諸会合を通して本領域に集う研究者と意見交換を行う中で, 助言を得たり, また連携を模索する方法で自身の研究の一層の推進を図っていく.
|