研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107507
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 洋平 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40589834)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチド / βシート / 荷電アミノ酸 / 電荷分離 / 自己組織化 / 2次構造 |
研究概要 |
平成25年度は、荷電アミノ酸を多く含むオリゴペプチドの自己組織化による、上下面に正および負の電荷をもつ側鎖が分離して配置する、電荷分離型ペプチドβシート形成について検討した。荷電側鎖を持つアミノ酸として、リシン(K:正電荷)とグルタミン酸(E:負電荷)を用い、アミノ酸配列の奇数番目および偶数番目にそれぞれを配置し、残りの部位を中性アミノ酸でありβシートを形成しやすいバリン(V)を配置した、18種類のペンタペプチドを、固相合成法により合成した。これらのメタノール中および固体状態のの自己組織化について、CD、X線回折、FT-IR、透過型電子顕微鏡から検討した。また、メタノール中で形成した集合体をグリシンバッファー中に混入し、側鎖が荷電した状態でβシート構造を保持しているかについてチオフラビン蛍光テストを行い、さらにTANGOアルゴリズムによる計算から、アミノ酸配列とβシート形成の可能性について検討した。その結果、アミノ酸配列の中央に中性アミノ酸であるバリンが位置する場合に、βシート構造が安定化することを見出した。これは、反平行βシートを形成することで、隣り合うβストランド間の同種電荷の距離が離れることにより電荷の反発が低減していることに起因すると考えられる。一方、アミノ酸配列の中央に荷電アミノ酸(EもしくはK)g会存在すると、これらの側鎖は必ず隣接するため、バッファー中に導入すると電荷の反発が大きくなるため、集合構造が解離してしまうと考えられる。現在、アミノ酸残基数がより大きなオリゴペプチドを用いて、見出された法則が成り立つかどうかについて検討している。また、側鎖に金属配位部位を有するヒスチジンやシステインを用いてβシートを形成し、金属イオンによる触媒機能の発現に関する検討や、電子供与体や受容体を側鎖に付与することによる、光誘起電荷分離特性などについて検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
E,V,Kからなるペンタペプチドの組合せは243通りあるが、いくつかの条件を課すことで18種類のペンタペプチドに絞り、2次構造に関する検討を行った。その結果、アミノ酸配列とβシート形成に関して明確な関係性が存在することを見出すことができた。このことは、荷電アミノ酸を含むペプチドの自己組織化全般に通じる規則である可能性もあることから、重要な知見を得ることができたのではないかと考えている。また、自己組織化の手法やそのキャラクタリゼーションの方法を確立できたことにより、今後の実験がよりスムーズに展開できようになったと考えられ、次年度に研究が大きく進展できると期待できる。さらに、現在、荷電アミノ酸だけでなく、配位部位を有するアミノ酸を含むペプチドからのβシート形成に関しても検討しており、それらの触媒作用や光電荷分離に関して今後研究を進めていくための準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
1.ペンタペプチドで見出した規則性が、ヘプタペプチドやノナペプチドにおいても成立するかについて検討する。 2.側鎖に金属結合能を持つシステインやヒスチジンを含むペプチドβシート形成について検討する。また、金属を結合した際の触媒特性について評価する。 3.電荷分離型ペプチドの、荷電表面や基板表面での自己組織化について検討する。特にマイカ表面に配向した状態でペプチド単分子膜を形成し、その上で細胞培養を行うことにより、細胞の配向培養を実現する。 4.システインを含むペプチドをマイカ表面に事故集積し、その後金ナノ粒子を滴下することで、金ナノ粒子によるナノ配線を実現する。 5.荷電アミノ酸側鎖に、電子受容機能を持つナフタレンジイミドやフラーレン、また、電子許容機能を持つ金属ポルフィリンなどを付与し、光誘起電荷分離と物質変換特性について検討する。
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