研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107508
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遷移金属錯体 / ポルフィリン超分子 / 二酸化炭素固定 / プロトン共役電子移動 / 光誘起電子移動 |
研究概要 |
ルイス酸(LA)を捕捉するサイトを導入したピリジルアミン系配位子を有する銅(II)及びニッケル(II)錯体を合成し、金属中心とルイス酸の共同効果によるCO2の触媒的還元を目的とする。一方、ポルフィリンジプロトン化体を基盤とするナノ細孔を有する超分子にCO2を吸蔵し、光誘起電子移動によるCO2の還元反応系を開発する。 1.プロトン及びルイス酸結合サイトとして、(3-ピリジル)メチル基を有する3座ビス(2-ピリジルメチル)アミン(BPA)配位子の合成、及びその銅(II)錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。結晶構造では、3-ピリジルメチル部位はもう一つのCu(II)中心に配位して、二核構造を取っていることがわかった。また、各種分光学的測定により、溶液中では、その錯体は三方両錐型単核構造を取っていることが示された。電気化学測定において、非配位ピリジン窒素のプロトン化により、酸素の還元反応が促進されることが示唆された。 2.周辺部に4つのカルボキシル基を導入した、サドル型ドデカフェニルポルフィリン(H2DPP)誘導体の塩酸塩を結晶化すると、再結晶溶媒等の結晶化条件により、複数種の結晶構造が形成されることがわかった。カルボキシル基同士の水素結合を形成していない結晶構造を有する結晶において、その結晶表面のカルボキシル基がCO2と相互作用し、標準状態で23cm3/gのCO2吸着能を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的とするキレート配位しないピリジンペンダントを有する3座ピリジルアミン配位子、及び硫黄でリンクされたビスピリジンチオエーテル配位子の合成、及びそれらの銅(II)錯体の合成とキャラクタリゼーションは達成された。しかし、それらの錯体に関するCO2下で電気化学測定測定を行った結果、CO2の還元が進行しないことがわかった。現在、配位子、中心金属の選択、などについてさらに検討している。 一方、周辺部にカルボキシル基を有するサドル型ジプロトン化ポルフィリンの超分子結晶、及び同様のサドル型ポルフィリンの銅錯体の合成と結晶構造解析を行った。周辺部にカルボキシル基を有するサドル型ジプロトン化ポルフィリンの超分子結晶において、CO2の超分子空孔内への取り込みは起こらず、むしろ、結晶表面に存在するカルボキシル基と相互作用して、CO2が結晶表面に吸着されていることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.ルイス酸部位としての金属イオンにキレート配位するサイドアームを導入した、新規ピリジルアミン及びチオフェン含有3座配位子を合成する。また、それらをはいいしとする、銅(II)、ニッケル(II)、ルテニウム(II)イオンなどを中心金属とする金属錯体を合成し、そのキャラクタリゼーションとCO2還元能を検討する。また、N-ヘテロサイクリックカルベンを有するキレート配位子、及びそれらを配位子とする金属錯体の合成とCO2還元能についても検討する。 2.周辺部にカルボキシル基を有するドデカフェニルポルフィリンを配位子とするCu(II)錯体を合成し、それが形成する超分子構造を結晶構造解析により検証する。十分な内部空孔が観測される系を見いだし、そのCO2吸蔵能を検討する。一方、昨年度見いだされた、周辺部カルボキシル基へのCO2の吸着を基に、電子供与体からの光誘起電子移動によるCO2還元反応を試みる。
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