研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107511
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズモン誘起電荷分離 / 光アンテナ / 酸化チタン / 金ナノ粒子 / 人工光合成 / 合金ナノ粒子 |
研究概要 |
本研究は、強い局在振動電場が生じるプラズモニックアンテナ界面を作製し、その界面で起こるプラズモン誘起電荷分離を、人工光合成系に適用することを目的としている。 まず、金ナノ粒子を用いた光捕集アンテナ界面の作製を行った。透明電極上に担持した金ナノ粒子を酸化チタンを被覆し、光捕集アンテナ界面を作製した。量子ドット増感光電極にこのアンテナ界面を適用したところ、光アンテナ効果に基づく外部量子収率の向上が見られた。続いて、より効率的な光捕集および近赤外域の光の利用を目指し、特定部位における局在振動電場の強度が非常に強く、近赤外域の光を吸収する異方的な形状の金ナノ粒子を用いて光アンテナ界面を作製した。透明電極上に作製した異方性金ナノ粒子を、低温で作製可能な酸化亜鉛薄膜で被覆することでアンテナ界面とし、量子ドット増感光電極に適用したことろ、波長1300 nmを超える範囲まで光電流を増強することに成功した。以上の結果は、2次元界面における電荷分離効率の向上に対応するものであることから、人工光合成系に適用可能な光アンテナ界面を作製し、その効果を実証することに成功したといえる。 さらに、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を用いることによって、プラズモン誘起電荷分離に伴いナノ粒子から酸化チタンへ電子が移動していることが示された。また、金と銀の合金ナノ粒子を用いることにより、プラズモン誘起電荷分離の効率向上の指針が得られた。銀ナノ粒子によるプラズモン誘起電荷分離では、電荷分離に伴って銀自身が酸化溶解するが、銀に金を25%以上加えた合金ナノ粒子は光安定であり、金ナノ粒子よりも高いプラズモン誘起電荷分離効率を示した。 以上の成果より、金属ナノ粒子の形状や化学組成を制御することによって、効率的に光を捕集し、高いプラズモン誘起電荷分離効率を示す光捕集アンテナ界面の作製につながる知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、種々の金属ナノ粒子を用いて光捕集アンテナ界面を作製し、それらが実際に量子ドット増感太陽電池の光電流を増強することを実証できた。これは、平成25年度の目標であった「光捕集アンテナ界面の作製」を達成していると言える。 水素発生系などへの適用については試行段階であり、やや遅れている一方で、プラズモン誘起電荷分離系については機構解明が進み、また、金属ナノ粒子の化学組成を制御することなどによって、高効率化に向けた指針も得られつつあるなど、想定を超えた進展もあった。 以上を総合的に勘案すると、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、光捕集アンテナ界面の構造のさらなる最適化を行い、半導体光電極などの中に光捕集アンテナを埋め込むなどのアプローチを行う。 また、金属ナノ粒子の化学組成や構造を最適化することで、プラズモン誘起電荷分離における外部量子収率を向上させるとともに、プラズモン誘起電荷分離の機構に関するさらなる知見を得ることを目指す。具体的には、金属ナノ粒子の化学組成や仕事関数、局在電場強度と電荷分離効率の関係や、プラズモン誘起電荷分離における酸化力の評価を行い、それらの結果から機構について考察する。 最終的には、最適化したアンテナ界面を、水分解をはじめとした人工光合成系へ適用することを目指す。
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