研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107512
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
前田 和彦 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40549234)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工光合成 / 水の酸化 / 水素製造 / 層状化合物 / ナノシート |
研究概要 |
平成25年度の研究で得られた主な成果は、以下の2点である。 (1) 層状金属酸化物KCa2Nb3O10を用いた水の酸化反応 層状遷移金属酸化物KCa2Nb3O10を剥離・再積層して得たナノシート凝集体が、ヨウ素酸イオンを電子受容剤とした水の酸化反応に活性を示すことをはじめて明らかとした。興味深いことに、剥離をしていない層状KCa2Nb3O10は全く活性を示さず、層の単層剥離という操作そのものが水の酸化活性発現に重要であると結論した。この反応に対する助触媒担持効果についても調べた結果、酸化ルテニウムのナノ粒子を高分散に担持すると、反応が著しく促進されることを見出した。この促進効果も、ナノシート凝集体の方が層状体よりも顕著であった。 (2) KCa2Nb3O10ナノシート凝集体による水の完全分解反応 酸化あるいは還元生成物による逆反応抑制の観点から、同ナノシート凝集体を用いて還元助触媒の担持効果を調べた。よりシンプルな反応系として水の完全分解反応を対象として研究を進めた結果、ナノシート凝集体の層空間に白金ナノ粒子を高分散担持することで、水の完全分解に活性な光触媒となることをはじめて明らかとした。その一方で、ナノシート凝集体の外表面のみに担持した場合では、水の完全分解は進行しなかった。これまで、酸化ルテニウムを層空間に取り込んだナノシート凝集体による水の完全分解(Ebina et al., J. Phys. Chem. B 2005)が報告されているが、本研究で見出したPt担持KCa2Nb3O10ナノシート凝集体は既報のものよりも高活性を示すことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究内容に対して、概ね順調に進展していると考えている。剥離・再積層処理によって水の酸化活性が発現するという事実や白金担持ナノシート凝集体による水の完全分解達成は、(プラスの意味で)当初想定していなかった発見であり、研究に新たな方向性を与える可能性があると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究では、平成25年度の研究成果を広く展開することを考えている。水の酸化反応系に関しては、当初の計画に従い助触媒の担持位置の検討を行い、水の酸化反応系での逆反応抑制効果を明らかとする。一連の研究により、逆反応抑制に資する光触媒調製手法を確立した後、KCa2Nb3O10のAサイトカチオンであるCaの一部または全てをSrで置換することでそのバンド端位置を精密制御し、水の酸化反応に対する影響を調べていく。このようなAサイト置換効果は、水の完全分解反応に対しても調べる予定である。こうして得られた知見を、順次水を電子源とした二酸化炭素還元系へと適用していく。
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