前年度の研究実績により、SiC光触媒においてはSiCへのオーミック電極形成が課題であることが明らかになったため、オーミック電極の形成が容易な構造を検討した。その検討を踏まえオーミック電極が作製しやすいp+型4H-SiCを基板として用い、その上にp型3C-SiCを結晶成長させた試料を用いた。その結果、4H-SiC上に成長された3C-SiCの結晶品質は、以前の6H-SiC基板上に成長させたものより向上していた。また、想定通りp+型4H-SiCへのオーミック電極作製も容易であった。このp+型4H-SiC基板上p型3C-SiCを作用電極とし、Niを対極とした硫酸電解液中での光電流は12mA/Wと観測され、これまでの約4倍の値となった。対極の犠牲反応がないと仮定するとエネルギー変換効率は1.5%となり、目標値に近づいたと言える。またPd助触媒をp型3C-SiC表面に担持した場合、光電流は15mA/Wに向上した。また、水素の発生量が光電流による見積もり値と近いことも確認した。なお、対極として犠牲反応が起こらない材料であるRuO2を用い、正確なエネルギー変換効率を算出した所、Pd担持のない場合で0.21%、Pd担持ありの場合で0.46%であった。SiCは腐食がなく、長期間安定に光電極として作用することを考慮すると、これらのエネルギー変換効率の値は他の材料に対しても遜色がないものだと考えられる。以上の実績により当初の目標に対して十分な成果が得られたと考えられる。
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