研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107518
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 茂 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (40312417)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水の光分解 / 光電気化学セル / カルコゲナイド薄膜 / 水素発生 / 太陽エネルギー / 表面修飾 / pn接合 |
研究概要 |
化合物半導体を用いた光エネルギーによる水の分解反応を太陽エネルギー変換の水準まで引き上げるには、固有吸収が可視光領域の多くをカバーするナロウギャップ半導体を利用することが不可欠である。研究代表者らはこれまでに、ナロウギャップp型半導体であるCuIn(Se,S)2(CIS)系化合物半導体薄膜を光吸収層とする水分解水素発生に取組んできた。この系では、CIS系化合物薄膜表面にn型半導体層を積層させてp-nヘテロ接合を形成させ、さらにその表面にPt微粒子を添加することでバイアス下での水分解水素発生が効率よく進行する。このとき、必要なバイアス電圧の高さは、それらのp-nヘテロ接合をベースとして作製した太陽電池の開放電圧(VOC)が高いほど低くなる。すなわち、高VOCが得られるp-nヘテロ接合太陽電池が得られれば、低バイアス電圧あるいはバイアスフリーで水分解水素発生を進行し得る光カソードとなると期待される。本研究は、このようなアイデアに基づいて、新たなp-nヘテロ接合からなる水の光分解水素発生系を構築することを目的とする。 平成25年度は、光吸収を担うp型半導体のワイドギャップ化と、新規n型半導体材料の開発に取り組んだ。その結果、CISのInサイトをGaで25%置換したバンドギャップ約1.7 eVのCIGS薄膜を用いることで、水分解反応の低バイアス化を実現した。また、新規n型半導体であるIn酸硫化物(In(S,O))をCISとを組合せた薄膜がABPE(バイアス電圧を考慮したエネルギー変換効率)で最大1.9%の高い光電極特性を有することを見出した。これは、既報のカルコゲナイド光電極では最も高い値である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり、CISのInサイトをGaで25%置換したバンドギャップ約1.7 eVのCIGS薄膜を用いることで、水分解反応の低バイアス化が実現された。Ga置換量をさらに増やすと、バンドギャップのワイド化は生じるが、pn接合形成に用いるn型半導体薄膜(CdS)との伝導帯下端エネルギーのバランスにより、バイアス電圧は大きくならない。このようなバンドアラインメントを変化させることでバイアス電圧が制御できるという結果は、研究計画時に予測されていたもので、当初の目標が達成されたものと考える。さらなる低バイアス化を目指して、CdSに代わる新たなn型半導体、すなわちCdSとは伝導帯下端エネルギーが異なるn型半導体の探索を行っていたところ、In酸硫化物(In(S,O))とCIS薄膜との組合わせで、光電極特性が大幅に向上することを見出した。これは当初予想していなかった大きな成果であり、今後の低バイアス水分解実現においても重要な結果であると考える。以上のことから、本研究が当初計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
各種構造最適化に関する検討 前年度開発したCIS-In酸硫化物(In(S,O))ヘテロ接合からなる光カソードの研究は、その成果をもとにさらに最適化検討を継続する。とくに、前年度計画ではあまり注視していないp-nヘテロ接合界面のモルフォロジー制御を研究課題の一つとして挙げる。一般的なp-nヘテロ接合太陽電池では、接合界面のラフネスが大きいと界面再結合が促進されるため開放電圧が低下する。すなわち、水分解水素発生の低バイアスカにはマイナスの効果となる。いっぽう、電極反応の立場からは、ラフネスの増加は表面反応場を増やすプラスの効果も期待される。表面構造を制御することで、これについての詳細な検討を進める。 新材料、新反応系への展開研究 本年度はさらに、新たなp-n接合材料の可能性を検討する。具体的な材料としては、Cu2ZnSnS4のほか、本研究領域の研究者との協議を元にして新たな候補材料を選定する。また、活性の向上やレアメタルフリーの材料を利用する観点から、Pt微粒子にかわる新規触媒の開発を行う。 水分解水素発生系において本コンセプトの有用性が実証されれば、CO2還元系に有効な光カソードのバンドラインアップの予測と実際の薄膜作製への展開を実施する。これについては、本領域に参画するCO2還元系の専門家と共同で研究をすすめる予定である。
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