研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107519
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
荒谷 直樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (60372562)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工光合成 / 光捕集アンテナ / 会合 |
研究概要 |
本研究課題では、可視域全域から近赤外領域まで吸収する高効率光アンテナ分子の創製を目指す。化学的安定性を十分に有する人工ローダミン色素の集積体を利用して、高効率な光収獲・励起子伝達・エネルギー移動が可能な人工光合成アンテナ系を創製し、化学エネルギーへの変換系との有機的な結合法を開発する。 本研究課題は『よりシンプルな分子で長波長吸収を達成する』という研究テーマである。溶解性と安定性を確保した堅牢な新しい骨格をもつローダミン系の多環式芳香族化合物を基軸とした平面状化合物の合成研究を展開し、機能評価する。π共役系を高いアスペクト比を保ったままで拡張することによって、比較的少ない芳香環ユニット数で吸収波長の長波長化が可能であると期待される。 具体的にはベンゼン環5つ相当の直線状化合物で、1000ナノメートル以上の波長を吸収し、その鏡像の蛍光を発するフルオロン系化合物の合成に成功した。分子内に電荷をもつ化合物の共鳴構造をデザインすることで、その長波長化を飛躍的に伸長することに成功した。ベンゼン環3つ分に相当するフルオロン類縁体の合成にも成功し、両者を比較することでさらなるπ拡張に期待がもてることを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本となる分子設計として、分子内に電荷をもちその電荷を非局在化できる共鳴構造を描くことのできる分子が、高いアスペクト比をもつことで、分子サイズに比較して顕著に長波長シフトするという現象を、実在の化合物によって証明することができた。蛍光スペクトルからは非常に小さいストークスシフトが観測され、分子骨格自身が非常に堅牢であることも同時に証明できた。酸化電位の上昇にともなう化合物の不安定化の問題を、今後はクリアしなければならない。そのために、電子求引性の置換基の導入を予定している。 化合物の合成は再現性を確認し、酸性・中性・塩基性のそれぞれの分子構造に対応するNMRスペクトルも得られている。ある程度のスケールアップも目処が立った。 これらの結果・進捗状況は、おおむね計画通りであり、申請者の設定したゴールに向かって一歩一歩着実に近づいている状況にある。従って、区分として(2)おおむね順調に進んでいるを選択した。
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今後の研究の推進方策 |
ベンゼン環をもう1枚分ずつ増やしたヘプタセン型のフルオロン化合物について分子設計し、適切な置換基を導入して安定性と溶解性を確保しつつ、さらなる長波長シフトする化合物の合成に挑戦する。また溶媒の極性を調整して化合物の集積化にも挑戦する。太陽光スペクトルに含まれる、これまでに全く利用できていなかったエネルギーを捕集できる。その後獲得した光エネルギーを貯蓄する方策を、領域内の若手研究者と連携して探る。この低い起電力しか持ちようのない化合物が、通常では吸収することのできない近赤外領域の光を吸収するという最大の特長を最大限に活かせるようなエネルギー変換系を探索する。
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