研究概要 |
本研究では、光合成酸素発生中心(OEC)の仕組みを組み込んだ二核ルテニウム錯体を合成し、平衡電極電位付近の電位で水の四電子酸化反応を実現することを目的とする。平成25年度は、酸化還元活性な架橋配位子ビス(ターピリジル)アントラセノール(btpyao)の安定的な合成法を確立し、この配位子を用いた二核ルテニウム錯体の合成を行った。 1,8-ジクロロアントラキノンをCuBrで臭素化した1,8-ジブロモアントラキンをAlで還元し、1,8-ブロモ-10H-アントラセン-9-オンを合成した。この1,8-ブロモ-10H-アントラセン-9-オンの10位を臭素で置換した後に、メトキシ化することにより1,8,10-トリブロモ-10H-アントラセン-9-オンを合成した。既報に従い合成した2,2':6',2"-ターピリジン-4'-ボロン酸と1,8,10-トリブロモ-10H-アントラセン-9-オンの鈴木ー宮浦クロスカップリング反応により、目的とする配位子を安定的に合成することに成功した。この配位子は当初予想していたフェノール型ではなくケト型であったが、等価な化合物だと考えられる。さらにこの配位子を用いて二核ルテニウム錯体を合成し、その酸化還元挙動について検討を行っている。 また、非常に強い電子供与性を示す配位子を用いて単核のルテニウム錯体を合成し、その酸化還元挙動について検討した。その結果、水の酸化反応の鍵となるRu(V)=O種を水の酸化反応の平衡電極電位付近で生成することが分かった。さらに[Ru(III)(bpy)3]3+を酸化剤として、この錯体を触媒とする水の酸化反応を行ったところ酸素発生することが分かった。
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