高効率で太陽光エネルギー捕集・伝達を行う天然型の光合成光捕集超分子の良さを生かしながら人工光合成に展開するためには、精密な色素集積超分子構造を保持しつつ、光機能性や安定性の制御や新たな機能性付与を行う方法論が重要である。そこで本研究では、緑色光合成細菌の膜外集光アンテナ超分子・クロロゾームを研究対象とし、構成分子の生合成過程を利用してクロロゾーム改変を行う方法論の開発を目的とした研究を推進した。あわせて、クロロゾーム膜面のエネルギー受容部位へ合成分子を再構成することによる機能化法の開発も推進した。 平成26年度においては、クロロゾーム内部で光機能性部位を形成する集光バクテリオクロロフィル分子の生合成過程の最終反応を利用して、それらの長鎖エステル鎖を改変した。その結果として、緑色硫黄光合成細菌Chlorobaculum tepidumの細胞内でバクテリオクロロフィルcの17位エステル鎖末端にハロゲン原子や不飽和結合を導入することに成功した。このようなエステル鎖を有するバクテリオクロロフィルcは細胞内でクロロゾームの光機能性部位に取り込まれることが示された。また、クロロゾームのバクテリオクロロフィル自己会合体で捕集した光エネルギーをクロロゾーム膜面で受容するベースプレート色素タンパク質の部分を合成機能分子で置き換え天然型の光捕集超分子を合成系と融合させることを目的として、両親媒性の機能分子を合成しベースプレート除去クロロゾームへの再構成を行った。 これらの研究成果は、査読付論文4報、学会発表8件で報告した。
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