研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107526
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
正岡 重行 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (20404048)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 酸素発生 |
研究概要 |
酸素発生触媒の開発は、人工光合成における最重要課題の一つである。本研究課題では、生体内酵素の多電子移動中心に着想を得た設計指針に基づき、多核金属錯体を対象とする酸素発生触媒開発の研究を進めた。特に、これまでの研究により高い酸素発生触媒能を有することがわかっている超分子鉄5核錯体を基盤とし、金属イオンや配位子を適宜変化させることによりその電子構造を詳細にチューニングし、高機能(低過電圧・高活性)触媒が創出できる可能性を検討した。 具体的には、鉄5核錯体の1つだけを他の遷移金属元素に入れ替えたFe4M型異種金属5核錯体を合成し、その電気化学挙動を調べた。その結果、鉄5核錯体において観測されていた5段階の可逆な酸化還元波のうち1つだけがシフトすることがわかり、異種金属錯体を作ることにより、多核錯体の電子構造を変化させることが可能であることを見出した。また、プロトン共役電子移動サイトを導入した多座配位子を用いて合成した鉄5核錯体では、pHに応じてその電子構造を変化させることができるとわかった。また、酸化還元電位は低電位側にシフトしており、当初用いていた鉄5核錯体に比べ、より低電位で酸素発生反応が進行することもわかった。今後は、これまでに合成したFe4M型異種金属5核錯体やプロトン共役電子移動型5核錯体の酸素発生機能を詳細に評価し、その結果をもとに新奇触媒の合成を行い、それらの構造-活性相関に関して検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた多核錯体の合成に成功しており、高活性酸素発生触媒の創出に向けた重要な知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究結果を基にして、高活性触媒創製のための合理的な設計指針の探索を継続する。具体的には、様々な異種金属多核触媒に対する合成法を確立するとともに、得られた新規触媒の機能評価を行う。特に、Fe4M型異種金属5核錯体やプロトン共役電子移動型5核錯体の酸素発生機能を詳細に評価し、それらの構造-活性相関を考察する。
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