研究領域 | 人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合 |
研究課題/領域番号 |
25107529
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
梶 貴博 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 ナノICT研究室, 研究員 (40573134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / エネルギー効率化 / ナノ材料 / 生体材料 |
研究概要 |
本研究は、ナノフォトニック構造と天然・人工光合成アンテナ系を組み合わせることで、光の利用効率を飛躍的に高めた人工光合成系の構築を目指している。また、有機色素系にフォトニックバンドギャップを作用させた系における励起状態寿命や励起子寿命について高速分光法により評価、解明することで、ナノフォトニック構造を用いた人工光合成系についての新たなデバイス設計指針を取得することを目指している。当該年度は、電子ビームリソグラフィーとドライエッチング微細加工プロセスにより、屈折率の高い透明電極材料(IZO)に多数の微細な穴を有するナノフォトニック構造を作製し、その上に光吸収に伴いプロトンポンプとして駆動する天然人工光合成材料であるバクテリオロドプシンを塗布した基板を用いた光電変換デバイス構築を行った。光照射時の光応答電流の測定を行ったところ、ナノフォトニック構造の効果により光応答電流が1.5~2倍程度増加することが観測された。また、透過もしくは反射スペクトルの測定により、デバイスの光学特性の評価を行った。しかしながら、現在のデバイス構造では、バクテリオロドプシン膜(紫膜)のサイズ(1マイクロメートル)よりナノフォトニック構造における穴のサイズの方が小さいため、バクテリオロドプシン膜が穴の中に入らず、増強された電磁場を効率的に利用できていないと考えられる。そのため、より光応答電流の増加率が高くなるデバイス構造の設計を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、現在のデバイス構造では、バクテリオロドプシン膜のサイズよりもナノフォトニック構造の穴のサイズが小さいために、バクテリオロドプシン膜が穴の中に入らず、増強された電磁場を効率的に利用できていないと考えられる。より大きな光応答電流を得るため、新たなデバイス構造の設計を現在進めている。
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今後の研究の推進方策 |
より大きな光応答電流が得られるデバイス構造として、ナノフォトニック構造の穴と構造部分を反転させたナノピラー構造の作製を検討している。これにより、バクテリオロドプシン膜とナノフォトニック透明電極構造の密着性が高まり、増強された電磁場を効率的に利用できると期待できる。また、金属ナノ構造により生じる増強電磁場を用いることで光利用を高効率化したデバイスの作製も行う予定である。また、フォトニックバンドギャップを有する2次元フォトニック結晶構造と有機分子系を組み合わせたデバイス作製も行い、時間分解蛍光測定により励起状態寿命や励起子寿命について評価を行う予定である。
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