公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
生物が創り出すバイオミネラルのもつ巧妙な構造・機能を明らかにし、その特徴を利用することができれば、新規の機能性ナノ材料を創り出すことが期待できる。これまでマベ真珠アラゴナイト結晶形成(配向性制御)に関わる外套膜分泌タンパク質の構造と機能を明らかにしてきた。これまでの成果に基づいて、平成25年度は,真珠マトリックスタンパク質のリン酸化構造を明らかにするとともに,マトリックスタンパク質多層膜に炭酸カルシウム以外の有用無機分子も導入し、バイオミネラルを超える新規融合マテリアルの調製・特性を検討した。マベ真珠アラゴナイト層をEDTAにより脱灰したマトリックスタンパク質多層膜を調製し, 2D-PAGEおよびProQ Diamondによる染色(リン酸化の有無)で解析した。その結果,マトリックスタンパク質は部分的にリン酸化されていることが判明した。このマトリックスタンパク質層についてDMSOおよび水からエタノール(EtOH)へと溶媒を置換すると膜間厚さが変化し,EtOH濃度依存的に減少し,厚さを制御できることが判明した。今回は,さらにマトリックスタンパク質多層膜中に希土類蛍光性Eu錯体を導入した新規融合マテリアルを調製し,その発光特性を解析した。興味深いことに,多層膜中に取り込まれたEu錯体は,特異的に配向していることがわかり,その発光特性は結晶配向性のよい真珠と悪い真珠,さらにリン酸化の有無により違いがみられ, リン酸化されたマトリックスタンパク質とEu錯体との特異的相互作用によるものであることが示唆された。さらにDMSOとEtOH中で発光特性が異なり,膜間の厚さにより蛍光の発光特性が異なることが示唆された。このように真珠マトリックス多層膜タンパク質-Eu錯体は,配向や膜間厚さによる蛍光発光特性が制御可能なユニークな特徴をもつことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定したチタニアとの融合マテリアルの調製が遅れているが,代わりに希土類蛍光性錯体と真珠マトリックスタンパク質との融合マテリアルに関して,興味深い特性が明らかになり進展した。
希土類蛍光性錯体と真珠マトリックスタンパク質との融合マテリアルについて、構造を明らかにしていくと同時に,発光特性の違いを利用してセンサー材料などへ展開する。一方、チタニアと真珠マトリックスタンパク質の融合マテリアルについては、早急にすすめる。
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Biosci. Biotech. Biochem.
巻: 77 ページ: 1917-1924
Fisheries Sci
巻: 79 ページ: 513-519
10.1007/s12562-013-0624-7