研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107718
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高島 義徳 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40379277)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホスト-ゲスト相互作用 / 分子認識 / 自己修復性 / 刺激応答性 / 靭性材料 |
研究概要 |
本研究課題ではホスト分子の特異的な分子認識能を利用して、自己修復性材料、刺激応答性材料及び靭性材料の作製を研究課題としている。 平成25年度はゲル内部での分子認識能を利用した刺激応答性材料の構築と材料強度特性について検討する。さらにゲル界面での分子認識能の検証とソフトマテリアル界面での分子認識の観察から硬質材料両面での分子認識の可能性を調べた。 【高靭性自己修復材料の作製】 特徴的な材料物性の創製には、可逆的な結合が重要と考え、化学架橋剤を用いずに、同じ高分子鎖にCDとアダマンタンを導入したヒドロゲルを作製した。機能性置換基を7 mol%以上導入したヒドロゲルは高い自己修復性を示した。一方で1 mol%周辺の導入率においては、自己修復性に加えて、高靭性に優れた材料となった。この材料の特徴として、CDとゲスト分子の包接錯体を架橋点としており、化学架橋されたアクリルアミドゲルは低架橋率においても延伸性は低く、すぐに破断してしまうが、包接錯体にて架橋されたヒドロゲルは高い靭性と形状回復性を示した。 【自己修復性と膨潤収縮性を兼ね備えた超分子材料の作製】 複数の機能性を兼ね備えた材料の構築のために、ホスト-ゲスト相互作用部位二種類をもつ高分子の設計を行い、多機能性超分子ヒドロゲルを作製した。βCD を修飾したホストモノマー、Fc を導入したゲストモノマー、Ad を導入したゲストモノマー を水とDMSOの混合溶媒中でラジカル共重合により作製し、水で洗浄することでヒドロゲル (βCD-Fc-Ad gel) を作製した。βCD-Fc-Adゲルを半分に切断し再接触させた。2時間静置した後には切断面でゲル同士の接着を確認した。一方、Fc を酸化してフェロセニウムカチオン (Fc+) とすると接着しなかった。この性質を利用して、Fc 部位の酸化状態を変化させることでゲルの膨潤収縮制御にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においては、ホスト-ゲスト相互作用を通して、高靭性かつ自己修復性を示す超分子材料の作成に成功している。このような靭性は共有結合によって形成された高分子材料では確認されないような性質である。また「自己修復性と膨潤収縮性を兼ね備えた超分子材料の作製」という課題においては、それぞれの機能を確認することに成功しており、今後はさらにそれぞれの機能が際立つように、分子構造などを精査することにになると考えられる。このような材料内部または材料表面での接着現象は可逆的なホスト-ゲスト相互作用仁基づいて、達成している。ホスト分子とゲスト分子を独立にゲルに導入した場合には選択的に接着および接着の制御に成功しており、この研究内容は論文発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
自己修復材料の作製には材料内部に化学架橋が含まれていないことをポイントにした。架橋部位に非共有結合性のホスト‐ゲスト相互作用を選択する場合、ゲスト分子に刺激応答性分子を選択することで伸縮性を兼ね備えた超分子マテリアルが構築できると考えた。いずれにしても、自己修復性や伸縮性といった機能は、ゲル表面での分子認識に加え、ゲル内部での動的な分子認識挙動を正確に評価する基礎的な解明も進める。これらの基礎的な評価が最終的には材料の機能向上に繋がると考えられ、新たな機能展開も進める。
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