研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107719
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾崎 雅則 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50204186)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 太陽電池 / 液晶 / フタロシアニン / 有機半導体 |
研究概要 |
本研究では、有機半導体と無機ナノ粒子・構造・分子との融合による、新しい有機薄膜太陽電池の開拓を目的として研究を実施した。用いるドナー材料として液晶性フタロシアニンを採用し、アクセプター材料としてフラーレン誘導体(PCBM)を用いて薄膜太陽電池をスピンキャスト法により作製した。まず、フィルファクター(FF)の改善のために、陰極電極とアクティブ層との間のバッファー層としてこれまで用いてきたLiFに変えてCsCO3、BCP、TPBiなどの検討を行い、Al電極蒸着時のアクティブ層へのダメージ低減がFF向上につながる可能性を示唆した。一方、感度波長拡大を目指した半導体ナノ微粒子の導入に先立って、吸収波長がフタロシアニンと相補関係にある高分子有機半導体を含む三種ブレンド・バルクヘテロ接合素子を検討し、効率改善を検討した。その結果、三種の材料がそれぞれ適度な大きさのドメイン構造を形成することが生成キャリアの取り出しに需要であり、外部量子効率(EQE)を得るために、今後導入する半導体ナノ微粒子がある程度の凝集状態をとりキャリアパスを形成する必要があることを示唆した。また、開放電圧を維持するために、導入するp型半導体のHOMO準位がフタロシアニンのそれと近い値をとる必要があることも明らかにした。次に、陽極電極上にZnOナノピラー構造を作製し、その表面にCdSナノ微粒子をコートして吸収波長範囲の拡大と生成されたキャリアの取り出し効率の改善を試みた。ナノピラー成長時にミクロンサイズの結晶が付着し、ダイオード特性を阻害しており、その除去方法の検討を行っている。そのほか、側鎖長の異なるフタロシアニン同族列や側鎖にSを導入し長波長吸収端を有するフタロシアニンなどとの混合による電子的性質の制御とキャリア伝導特性を調べ、側鎖長の異なる同族列の混合により変換効率の改善が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、感度波長拡大を目指した半導体ナノ微粒子の導入の有効性を検討するために、有機高分子材料の混合を行った。その結果、下記のような知見と問題点が明らかになり、次年度へつなげる成果が得られた。すなわち、ナノ微粒子の導入による感度波長の改善は、導入するナノ粒子の電子状態(伝導帯、価電子帯の位置など)の検討と電荷取出し特性の検討が必要となってくる。たとえば、半導体微粒子の伝導帯下端がドナー材料とアクセプター材料のLUMO準位の間に、同時に価電子帯上端がドナー、アクセプターのHOMO準位の間に来るような電子状態をとる場合には、ドナー、半導体微粒子、アクセプターのいずれの領域で生成された励起子も隣接界面で電荷分離を起こす可能性があるが、それぞれの領域がある程度の大きさで相分離していてそれぞれの領域内を生成された励起子やキャリアが動くことができる必要がある。すなわち、導入した半導体微粒子が孤立分散するのではなくある程度つながって伝導パスを形成する必要がある。したがって、ナノ微粒子の電子状態制御と同時に、集合状態、配列制御の重要性が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、吸収感度波長の拡大を目指して凝集・配列制御の可能な半導体ナノ粒子・ナノロッドの検討を行い、生成キャリアの取り出しのためのパスの確保を目指す。また、ZnOナノピラー構造と半導体ナノ粒子との複合により、電荷性成功率の改善のみならず液晶性フタロシアニンのカラム構造配列制御の可能性も検討する。さらに、新規アクセプター材料やダウンコンバージョン材料の探索を行う。
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