研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107721
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松浦 和則 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60283389)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウイルス / タンパク質 / 自己集合 / 着せ替え / 無機微粒子 |
研究概要 |
近年、ウイルスキャプシドなどの天然のタンパク質集合体を、ナノ材料として応用する研究が盛んに行われているが、球状ウイルスキャプシド構造を、合理的にデザインした合成ペプチドの自己集合により構築した例は知られていない。我々は、トマトブッシースタントウィルス(TBSV, 33 nm)の内部骨格モチーフであるβ-Annulus構造を形成する24残基ペプチド(INHVGGTGGAIMAPVAVTRQ LVGS) が、水中で30-50 nmのナノカプセル(合成ウイルスキャプシド)を形成することを明らかにした。本研究課題では、このウイルス由来ペプチドからなるナノカプセルの内部や表面を、タンパク質や無機材料などで「着せ替えた」融合材料を創製することを目指している。 本年度は、より毒性の少ないナノカプセルの構築を目指し、ヒト血清アルブミン(HSA)で着せ替えた合成ウイルスキャプシドの創製を検討した。HSA表面にはジスルフィド形成していないCys残基が一つだけ存在しているので、これを連結ターゲットとして、HSA-β-Annulusペプチドコンジュゲートを合成し、これを自己集合させることで、合成ウイルスキャプシド表面をHSAが単分子層で覆ったカプセルを構築した。HSA-β-Annulusペプチドコンジュゲートは、Tris-HCl buffer中および水中において、単独で自己集合して70~200 nm(濃度に依存する)の球状集合体となることがDLS測定およびTEM観察から明らかとなった。驚いたことに、このコンジュゲートは0.01μMという低濃度においてでさえも、約70 nmの球状集合体を形成した。未修飾のβ-Annulusペプチドの臨界会合濃度は25μMであるので、HSAで着せ替えたことによりカプセル構造が安定化されたと考えられる。また、HSA着せ替え合成ウイルスキャプシドのζ-電位のpH依存性(HSAの等電点のpH 4.8ではほぼ0の電位 より低pHでは正の電位、より高pHでは負の電位)から、期待通りキャプシド表面にHSAが提示されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、ヒト血清アルブミン(HSA)とβ-Annulusペプチドのコンジュゲートの合成・精製に成功し、HSAで着せ替えた人工ウイルスキャプシドの創製に成功した。また、この人工ウイルスキャプシドが予想外にも0.01μMという低濃度においてでさえも安定にカプセル形成することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト血清アルブミン(HSA)とβ-Annulusペプチドのコンジュゲートの合成・精製に成功し、HSAで着せ替えた人工ウイルスキャプシドの創製に成功し、この人工ウイルスキャプシドが予想外にも0.01μMという低濃度においてでさえも安定にカプセル形成することを見出した。今後は、このHSAで着せ替えたウイルスキャプシドのキャラクタリゼーション、特に細胞への導入効率・導入機構・細胞局在性、細胞毒性の評価などを検討する。また、本手法の一般性を示すために、IgG抗体のFab'フラグメントや組換え西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの他のタンパク質で着せ替えたウイルスキャプシドの構築も検討する。さらに、β-Annulusペプチドからなる合成ウイルスキャプシドの表面に、金属ナノ粒子結合ドメインを導入し、金ナノ粒子や酸化亜鉛ナノ粒子で着せ替えたウイルスキャプシドも創製し、それらの特性解析も実施する。
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