我々は、トマトブッシースタントウィルスの内部骨格モチーフであるbeta-Annulus構造を形成する24残基ペプチド が、水中で30-50 nmのナノカプセル(人工ウイルスキャプシド)を形成することを明らかにした本研究課題では、このウイルス由来ペプチドからなるナノカプセルの内部や表面を、タンパク質や無機材料などで「着せ替えた」融合材料を創製することを目指した。まず、金ナノ粒子で着せ替えた人工ウイルスキャプシドを構築するために、29残基のペプチドINHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGSGGGCGを合成し、これに金ナノ粒子(5 nm)結合させ、金ナノ粒子-beta-Annulusペプチドコンジュゲートとした。臨界会合濃度以上の濃度となるように水中に再分散させ、未集合の金ナノ粒子を透析で除くことにより、金ナノ粒子で着せ替えた人工ウイルスキャプシドを構築した。その結果、人工ウイルスキャプシドと同様の約50 nmに金ナノ粒子が30-60個程度集合した構造がTEMで観察された。次に、より毒性の少ないナノカプセルの構築を目指して昨年度構築したヒト血清アルブミン(HSA)で着せ替えた人工ウイルスキャプシドの細胞内導入を検討した。、FITC標識したHSA-beta-Annulusペプチドコンジュゲートを調製し、HT1080細胞への導入を検討したところ、細胞内に十分量のFITCの蛍光が観察され、細胞核近傍のゴルジ体に局在していることが示唆された。またWST-assayにより、このConjugateはHT1080細胞に対して毒性が無いことが示された。
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