研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107725
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 邦夫 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90202952)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭酸アパタイト / PLGA / 界面制御 / 融合化 / 厚さ |
研究実績の概要 |
海面骨は無機組成が炭酸アパタイトであり、炭酸アパタイトがコラーゲンと高度に融合されている。また、構造としては連通多孔体構造をしめし、骨芽細胞、破骨細胞などの細胞が遊走されやすい構造をとっている。これまでの研究でリン酸三カルシウムフォームを前駆体として炭酸アパタイトフォームを調製し、当該フォームに乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)を真空コーティングし、さらに炭酸アパタイトコーティングすることによって得られた炭酸アパタイトPLGA階層化骨補填材が優れた組織親和性、骨伝導性、優れた物性を示すことがわかった。 しかしながらこれまでの炭酸アパタイトPLGA階層化骨補填材の調製法は煩雑であり、時間がかかる。そこで本研究では炭酸アパタイトとPLGA間の界面制御に着目し、より簡便な調製法を検討した。これまではPLGA溶液に炭酸アパタイトを単純浸漬すると海面制御が十分に行えないため、真空浸漬によって炭酸アパタイトにPLGAをコーティングしていたが、まず炭酸アパタイトを溶媒に浸漬し、その後にPLGA溶液に浸漬すると炭酸アパタイトフォームにPLGAをコーティングできることが明らかになった。また、PLGA被覆炭酸アパタイトフォームを水酸化カルシウム懸濁液に浸漬、炭酸化して炭酸カルシウムとし、当該炭酸カルシウムをリン酸化して炭酸アパタイト/PLGA/炭酸アパタイトという階層化フォームを調製していたが、炭酸アパタイトフォームを炭酸アパタイト-PLGA懸濁液に浸漬することによって炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイトが調製できることが明らかになった。また、当該フォームはこれまでの炭酸アパタイトPLGA階層化骨補填材とほぼ同様の物性及び組織反応を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調製法に関しては真空浸漬の煩雑さとPLGA被覆炭酸アパタイトフォームへの炭酸アパタイトコーティングが問題であったが、単純浸漬でコーティングできない理由が粘性あるPLGA溶液が炭酸アパタイトフォームに含浸されにくいことに起因することを見出し、あらかじめ、溶媒を炭酸アパタイトに導入することによって炭酸アパタイト表面へのPLGAの融合を阻害していた空気層の除去が可能となった。また、三相構造を二層構造とすることを検討し、問題がないことを明らかにしているためおおむね順調である。 炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材の物性に関して測定し、これまでの炭酸アパタイトPLGA階層化骨補填材の物性とほぼ同じであることがわかっっている。また、物性は海面制御よりPLGAの厚さに依存することを見出しているため概ね順調である。 さらに、炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材の組織親和性に関して実験動物を用いて予備的に組織親和性を検討し、これまでの炭酸アパタイトPLGA階層化骨補填材の物性とほぼ同じであることがわかっっている。このことから組織親和性評価に関しても概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
海面骨と同様に連通多孔体構造を示し、海面骨と同様に無機組成が炭酸アパタイトであり、海面骨と同様に炭酸アパタイトが有機材料と融合している炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材を調製できることを明らかにし、当該炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材は組織親和性および骨伝導性に優れることを、実験動物を用いて予備的に確認した。実験動物を用いた組織親和性、骨伝導性や骨置換の確認は骨補填材の開発に必須であるが、比較的長い時間がかかり今回の研究期間で十分な結果を出すことはそもそも不可能である。しかしながら、当初の目的通り、調製法を確立し、炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材の組織反応および骨伝導性を予備的に実験動物で検証することができた。今後は、今回の予備的動物実験の結果を基盤として、より長期にわたる炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材埋植実験、より大型の実験動物を用いた炭酸アパタイト-PLGA被覆炭酸アパタイト骨補填材の埋植実験などを行い、埋植実験の社会実装を進めることが期待される。
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