本研究においては前駆体を用いて溶解-析出型の組成変換を行い、海綿骨の組成と構造を模倣した炭酸アパタイトフォームを調製し、当該炭酸アパタイトフォームの脆性を改善する目的で炭酸アパタイトフォームに炭酸アパタイトと乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)の融合体で階層化を行った。また、炭酸アパタイト自体の骨伝導性を向上させるために炭酸カルシウムとの融合化も行った。 ポリウレタンフォームをテンプレートとして用いてα型リン酸三カルシウムフォーム(αTCPフォーム)を調製し、炭酸水素ナトリウム水溶液中での溶解析出反応によって完全連通多孔体構造を保ったまま組成を炭酸アパタイトとした。 炭酸アパタイトフォームをPLGA溶液あるいは炭酸アパタイト含有PLGA溶液に浸漬して融合化を行った。炭酸アパタイトフォームの臨床応用における操作性に著しい影響を及ぼす機械的強さ(圧縮強さ)は炭酸アパタイトフォームをPLGA-炭酸アパタイト融合体で階層化すると著しく増大した。階層化していない炭酸アパタイトの圧縮強さは20kPa程度であったが、PLGA-炭酸アパタイト融合体での階層化により約400kPaに増大し、臨床的な操作性に関しては十分な値が得られた。 家兎の大腿骨に骨欠損を調整し、各種炭酸アパタイトフォームで再建、3ヶ月後にμCT像を撮影した。炭酸アパタイトフォームは機械的強さが小さいため、術式が困難であるがフォームへの骨伝導が確認できる。一方、炭酸アパタイトフォームをPLGAでコーティングしたフォームは機械的強さに優れるため術式は容易であったが、骨伝導が限定的であった。これらに対して、炭酸アパタイトPLGA融合化体で炭酸アパタイトフォームをコーティングした場合には機械的強さに優れるだけでなく、優れた骨伝導性を示すことがわかった。
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