公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では中性子捕捉効率が高く、低濃度で作用可能な新規ホウ素薬剤の開発が不可欠である。本研究では、これまでの知見を元に、BNCT効率の向上や投与量の低減に基づく副作用の回避などを目的とし、高密度ホウ素含有無機化合物をホウ素源として用い、標的細胞内でのホウ素高集積化を目指した。A03班片桐・冨田グループとの共同研究によりBNCT効率を高めるために、一粒子あたり多量の10Bを含む希土類金属酸化物ナノ粒子を調製し、さらに血中滞留性を高めるためにコンドロイチン硫酸によるアニオンコーティングした新規BNCT薬剤を開発し、担がんマウスに対するBNCT評価を行った。合成条件を検討、粒径、表面電荷を測定した。均一沈殿剤であるヘキサメチレンテトラミン濃度を高く、また熱容量の大きい熱源を用いて合成をおこなうことで粒径の小さな粒子が得られた。反応温度上昇速度、塩基濃度が粒径を制御する因子となると考えられる。また、アニオンコーティングを施した粒子は腫瘍への集積性は低いものの中性子を照射した際の腫瘍増殖抑制効果は現在臨床で使用されているL-ボリルフェニルアラニンと同程度であった。この粒子が中性子間最大距離よりも大きな粒径を有しているために、低濃度であっても中性子を捕捉出来たためであると考えられる。これらの知見は、これまで適用が困難であった深部がんへのBNCTの適用にする可能性を秘めるなど新規BNCT薬剤としての展開が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
本研究目的の主目的である、ホウ素中性子捕捉反応効率の高い、ナノ粒子の作製およびサイズの最適化に成功することが出来た。しかし、まだ血中でのコーティングの安定性やそれに伴う毒性低減化の必要などがある。
生体内での安全性を向上させるため、領域内のA03片桐・冨田グループおよび評価委員秋吉グループとの共同研究で、イットリウムオルトボレートナノ微粒子のナノゲルへの包埋を検討する。また平成26年度は最終年度として、これまで見いだした含ホウ素希土類酸化物融合マテリアルの創製および機能の検討と共に、これまでの成果を総括する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 4件)
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