均一沈殿法における試薬比、合成法を検討したところ均一沈殿剤であるヘキサメチレンテトラミン濃度を高く、また熱容量の大きい熱源を用いて合成をおこなうことで粒径の小さな粒子が得られた。反応溶液の温度上昇速度、塩基濃度が粒径を制御する因子となると考えられる。粒径、表面電荷を測定したところ、本粒子は高い正電荷をもつことからアニオン性分子であるコンドロイチン硫酸ナトリウムや中性分子であるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)をコーティング剤として用い有機―無機融合マテリアル化を行うことで、粒子の正電荷を緩和すると共に、培養細胞に対する毒性を低減することに成功した。 マウス尾静脈投与時の急性毒性が最も低くマウス個体に対する安全性が高いHP-β-CD/YBO3複合体を用い静脈投与し体内動態評価を行った後、担がんマウスに対するBNCT評価を行った。担がんマウスはBalb/cマウス(5週齢、雄)の右大腿部皮下にマウス直腸がん細胞を投与後10日後、腫瘍サイズが10 mm 程度となった時点で実験を行った。400 ppm BのHP-β-CD/YBO3複合体水溶液(200 μl)を投与した際の腫瘍への集積性は低いものの中性子照射による腫瘍増殖抑制効果は現在臨床で使用されているL-ボリルフェニルアラニン(BPA)と同程度であった。さらに、腫瘍増殖抑制効果の中性子線量依存性を中性子照射時間を変えることで検討した。その結果、HP-β-CD/YBO3複合体を用いた場合、BPAとほぼ同等の腫瘍増殖抑制効果であったのが、線量が減少するに従い、BPAよりも高いBNCT効果を示すことが明らかとなった。
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