研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107731
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
竹岡 裕子 上智大学, 理工学部, 准教授 (50338430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機無機ハイブリッド / 人工骨 / 生分解性高分子 |
研究概要 |
デオキシリボ核酸(DNA)を繊維状HApに所定量加え、焼成することによりマクロポアとミクロポアの両方を有するBCPの合成を検討した。その結果、DNAの添加量の増加に伴い、β-TCP含有率は増加し、BCPの二相比を自在に制御できることが分かった。また、f-HApのみから作製したセラミックスは数ミクロンの気孔を有するのに対し、DNAの添加により数十ミクロン程度のマクロポアが形成され、気孔率は40%~65%まで変化可能であることが分かった。DNAがリン源と気孔源となり、ミクロポアとマクロポアの連結孔を有するBCPの合成に有効であることが示された。また、ラットの大腿骨と脛骨から骨髄間質細胞(RBMC)の培養の結果、BCP上では細胞増殖性が優位であり、骨分化のマーカーとして考えられるオステオカルシン(OC)産出量においても、HApより優位な値を示すことが分かった。加えて、DNAを吸着させたイオン交換樹脂をf-HApに添加することにより、より大きな気孔径を有するBCPの作成も可能であった。BCP中でのPLLAのIn-situ重合の結果、BCPはHAp同様、重合触媒としての機能を果たすことが明らかとなった。 BCP多孔体中でPLLA等の高分子を複合化することが可能であり、初期的な力学的強度が人工骨材料として応用するのに十分であることは明らかとなった。その初期強度を体内に埋入した際に新生骨は再生するまでの間、保持させることが今後の課題となる。より高分子量、高結晶性の生分解性高分子の導入、有機-無機界面の相互作用の増強等が有効な手段であると考えている この成果を「融合マテリアル」領域シンポジウムや高分子討論会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた二相性セラミックスの作製と生分解性高分子との複合化に成功し、力学的強度等の目標も達成している。初期的な強度は達成したものの、持続的な強度の維持にはまだ問題をかかえており、おおむね順調であるが、引き続き更なる研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでに得られた多様な組成と気孔を有する二相性セラミックスを用いて、種々の生分解性高分子との複合化により硬組織修復用バイオマテリアルの開発を進める。体内に埋入した際の状況を模倣した環境下においてに、材料の力学的強度の継時的変化と細胞による骨分化の挙動について、基礎的な解明も進める。初期強度は問題ないものの、初期強度を体内に埋入した際にある程度保持させることが今後の課題となる。現在のところ、初期過程における力学的強度の大幅な低下が見られており、多官能性低分子の利用やSBF等の利用などを検討するより高分子量、高結晶性の生分解性高分子の導入、有機-無機界面の相互作用の増強等が有効な手段であると考えている。
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