(1) 律速過程と充放電性能の相関解明:複合電極における電荷の移動抵抗への寄与が推測される素過程として、ポリマー内の自己電子交換、ポリマー/π共役界面での交差電子交換、π共役固体ネットワークの電子移動、π共役固体集電体間の電子移動に分類し、各過程の寄与について電極組成・構造を変えたπ共役/凝縮レドックス融合物質の電気化学応答をもとに解明した。π共役固体の組成を調整した電極の電荷移動抵抗と固体/ポリマー間の接触面積の相関、膜厚の異なる電極における電荷移動抵抗を明らかにした。材質の異なる集電体上に形成された複合電極における電荷移動抵抗の支配因子を明確にした。電荷移動抵抗が充放電特性と直接相関をもつことを実証し、充放電特性向上に向けた活物質の設計指針の一つを導出した。 (2) 律速段階における電荷移動の効率向上と高密度エネルギー貯蔵物質としての実証:π共役/凝縮レドックス融合物質に電荷補償系を共存させ、電荷保持力を確かめた。予備知見として明らかにしている高密度レドックスポリマー単独による可逆的エネルギー貯蔵能を、π共役系との分子レベルでの融合により向上させ、従来性能を超えた有機電池を実現した。具体的には、定電流下での平衡電位を参照電極基準で測定し、ポリマーに蓄積される電荷密度を求めた。また、減衰挙動から電荷保持力を含めた速度パラメータを見積もり、電荷貯蔵効率を把握した。電解質中での平衡膨潤度、対イオンや溶媒の物質移動量と速度を実測し、対イオン種や溶媒因子との相関を明確にすることにより、レドックス凝縮系としての特性を解明した。レドックス席の速い外圏的電子移動が、膨潤ゲル中でも大きな速度定数を与えることを実証し、高速電荷輸送可能な機能性界面を分子レベルで創出した。 以上を総合し、π共役/凝縮レドックス融合物質を斬新なエネルギー貯蔵材料の一つとして確立した。
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