研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
25107735
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲル / 複合材料 / ナノ材料 / 分子認識 / スマートマテリアル / 融合マテリアル / 金ナノ粒子 / 刺激応答性ゲル |
研究概要 |
本研究では,無機ナノ粒子や金属ナノ粒子の表面上に原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いて分子応答性ゲル層を形成し,革新的なスマート融合ナノ粒子の創成を試み,本年度は以下のような成果が得られた。 (i) 分子応答性ゲル修飾ナノ粒子の調製:SiO2粒子表面上にビスフェノールA(BPA)応答性ゲル層を形成させる方法を検討し,BPA応答性ゲル修飾SiO2粒子の調製を試みた。BPAに応答した粒径変化を示したが,粒子の分散安定性は低かった。そこで,ATRP開始剤である臭化アルキル基の導入方法を検討し,ポリエチレングリコール(PEG)鎖をスペーサーとして導入した臭化アルキル基導入SiO2粒子が比較的高い分散安定性を示すことがわかった。この粒子の表面に導入した臭化アルキル基からATRPによって側鎖糖含有モノマーと重合性官能基導入レクチンを重合することにより,粒子表面にグルコース応答性ゲル層を形成させた。また,チオール基との反応によってAu粒子にATRPの開始末端となる臭化アルキル基を導入する方法についても検討した。 (ii) 分子応答性ゲル修飾メソポーラス材料の調製:(i)のSiO2粒子表面上での反応と同様に,ATRP法によってメソポーラスシリカ表面上に分子応答性ゲル層を形成させるため,ATRP開始剤である臭化アルキル基の導入を試みた。(i)のSiO2粒子表面での分子応答性ゲル層の形成が可能になれば,同様の方法でメソポーラスシリカ表面に分子応答性ゲル層を形成させる。 (iii) Auナノ粒子を均一分散した分子応答性ゲルの合成:Au粒子表面に重合性官能基を導入し,Au粒子モノマーを調製した。このAu粒子モノマーと側鎖糖モノマー,架橋モノマーを共重合することにより,ゲルネットワークにAu粒子を均一分散させたAu粒子分散分子応答性ゲルの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子応答性ゲル修飾ナノ粒子の調製では,SiO2粒子表面上にATRPの重合開始剤である臭化アルキル基を導入させることには成功した。しかし,緩衝液中でのATRPによってSiO2粒子表面にゲル層を形成させると,粒子の分散安定性が低下して凝集が生じてしまった。そのため,SiO2表面にATRP開始剤を導入する方法を新たに検討する必要があり,少し時間を要してしまった。Auナノ粒子を均一分散した分子応答性ゲルの合成では,Au粒子表面への重合性官能基の導入は順調に進んだが,このAu粒子モノマーと側鎖糖モノマー,架橋モノマーを共重合する際にAu粒子の凝集が観測された。そこで,重合性官能基導入Au粒子の表面改質によって安定化を試みた。その結果,ゲルネットワークにAu粒子を均一分散させたAu粒子分散分子応答性ゲルの合成に成功した。以上のように,当初予定していた計画に基づいて研究を進める中でいくつかの問題点が生じたが,概ね解決することができ,次年度に向けて研究を加速できる状態になってきた。これらの結果から,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,引き続き分子応答性ゲルで修飾したSiO2粒子とAu粒子を調製し,標的分子の存在下での構造色変化や表面プラズモン共鳴発色変化などを調べる。さらに,分子応答性ゲルで修飾したSiO2粒子やAu粒子の粒径変化を動的光散乱法および原子間力顕微鏡により調べ,構造変化と光学特性変化との関係を明らかにする。同様の方法によってメソポーラスシリカ表面上にATRPによって分子応答性ゲル層を形成させ,標的分子に応答したゲル層の構造変化を調べる。また,メソポーラスシリカの孔内にモデル薬物を含有させ,標的分子に応答したゲル層の膨潤収縮による薬物放出制御を試みる。さらに,平成25年度と同様に,Au粒子分散分子応答性ゲルを合成する際の最適な合成条件を明らかにすると共に,標的分子存在下でのAu粒子分散分子応答性ゲルの光学特性変化を調べる。これらの結果に基づいて分子応答性ゲルとSiO2粒子やAu粒子との融合マテリアルの分子センサーとしての応用について検討する予定である。
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