腫瘍(がん)を構成する細胞の中には「腫瘍(がん)幹細胞」と呼ばれる,化学療法や放射線療法などに抵抗性を示し再発や転移の原因になると考えられている細胞群が存在し,この腫瘍幹細胞を制御することががん治療の重要な鍵となっている.多彩な作用点を有するプラズマ照射による治療が,腫瘍幹細胞に対して有効であれば,治療に伴う正常組織の破壊を抑えた低侵襲性のがん治療法として有用になる可能性がある.本年度は,腫瘍幹細胞マーカーとしてアルデヒド脱水素酵素(ALDH)高発現細胞をターゲットに,子宮類内膜腺癌細胞株および胃癌腹膜播種細胞株について,低温大気圧プラズマ照射による効果を検討した.プラズマ照射によってそれぞれの細胞株はアポトーシスに陥ることが確認され, ALDH高活性細胞が減少する傾向が認められた.また,ALDH高発現細胞および低発現細胞を単離し,両者に各々プラズマ照射を行ったところ,両者ともにcell viabilityの低下が認められ,腫瘍幹細胞,非腫瘍幹細胞ともに抗腫瘍効果が認められた.さらに,皮下担癌マウスにおけるプラズマ直接照射によって,病理組織学的に腫瘍変性所見が確認され,増殖能を示すKi-67 labeling indexが低下しており,ALDHの発現も低下していた.同部位ではcleaved caspase-3の増加もみられ,腫瘍のアポトーシスも確認された.以上の結果から,プラズマ照射が腫瘍幹細胞を制御できる可能性が示唆された.
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