研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
25108508
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
上田 真史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40381967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低温プラズマ / 分子イメージング / 定量解析 / 炎症 |
研究概要 |
本研究では、定量的・非侵襲的・同一個体で経時的に生体機能情報を取得できる核医学分子イメージング技術を用いて、局所および全身におけるプラズマと生体組織との相互作用を定量的に評価し、その分子メカニズムを解明することを目的とする。 今年度は、プラズマの止血作用に着目した研究を行った。一般に、流血を伴う傷を止血すると炎症過程を経て回復に至ることが知られている。現在臨床利用されている止血装置は、熱を加えてタンパク質を変性させることにより止血を行うことを機序としており、止血後の炎症反応が長期化する問題点がある。一方、熱的要素を伴わない低温プラズマ照射で止血をすることで、炎症の低減、早期回復につながるのではないかと考えた。 ヘリウムガスを14.5 Vの電圧で励起することで、プラズマを発生させた。ガス温度は摂氏40度以下であった。麻酔下でマウスを開腹し、肝臓を露出・切開し、その際の流血をプラズマ照射あるいは高温熱凝固により止血した。止血確認後に開腹部を縫合し、肝臓止血部の回復過程を1~25日後まで、ヘマトキシリン-エオシン染色およびマクロファージに対する免疫染色により、組織学的に比較した。その結果、高温熱凝固止血群では術後25日経過しても壊死した細胞巣および周辺に浸潤した炎症性マクロファージを認めたが、プラズマ止血群では術後15日の時点で壊死巣および炎症性マクロファージが消失し、止血後の回復が早期に達成されることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、外傷の治癒過程における炎症反応に対するプラズマ照射の影響を評価する予定であったが、臨床で問題となっている術後炎症に対するプラズマ照射の影響を評価した方が、当該領域研究の目指す「プラズマ医療の確立」に資する成果につながると考え、検討対象を変更した。このように軽微な計画変更はあったものの、プラズマ照射が術後炎症軽減につながる成果を得た。次年度に炎症の程度を経時的かつ非侵襲的に評価することで研究計画全体の目的が達成可能であることから、現時点ではおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
炎症部位に集積することが知られている18F-FDGを用いて、止血後に患部で生じている炎症反応を経時的かつ非侵襲的にモニタリングするとともに、炎症性サイトカインの定量を行うことで、プラズマ照射局所における生体相互作用を定量的に評価する。 また、プラズマを吸入させた動物の脳神経活動(糖代謝率)を測定することで、プラズマの全身的な生体相互作用の有無についても評価する。
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