本研究では、定量的・非侵襲的・同一個体で経時的に生体機能情報を取得できる核医学分子イメージング技術を用いて、局所および全身におけるプラズマと生体組織との相互作用を定量的に評価し、その分子メカニズムを解明することを目的とする。 プラズマの全身作用については、アルツハイマー病モデル動物として用いられる遺伝子改変マウスを用い、プラズマ吸入を行ったマウスと行っていないマウスの脳糖代謝率(神経活動の指標)と認知機能を測る行動薬理学試験の結果と照らし合わせることで、プラズマの神経活動賦活効果について検討を試みた。しかしながら遺伝子改変マウスの認知機能低下が認められなかったため、プラズマの影響を測定する実験系としては不適当と判断し、局所におけるプラズマ-生体組織相互作用の定量解析に注力した。 局所作用に関する今年度の研究では、マウス肝臓を切開した際の流血をプラズマ照射あるいは高温熱凝固により止血し、その後の回復過程で生じる炎症反応を、炎症部位に集積することが知られている18F-FDGを用いて、PET撮像により経時的かつ非侵襲的にモニタリングした。高温熱凝固止血群では術後15日後の時点で腹部に顕著な放射能集積を認めた一方、プラズマ止血群における腹部への放射能集積は術後15日後には消失した。PET撮像後に肝臓を摘出してオートラジオグラフィを行ったところ、放射能集積が止血部に由来することを確認できた。これらの経時変化は、昨年度行った組織学的評価と一致した。以上の結果から、プラズマ止血では止血後の回復が早期に達成されることを明らかとし、それをPETで非侵襲的かつ定量的にモニタリングすることに成功した。
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