研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
25108512
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
秋元 義弘 杏林大学, 医学部, 准教授 (60184115)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ / 創傷治癒 / ガレクチン / 糖鎖修飾 / O-GlcNAc / 電子顕微鏡 / コラーゲン線維 / 細胞死 |
研究概要 |
本研究の目的は、プラズマ照射による細胞、組織への影響を分子形態学的に明らかにすることである。皮膚へのプラズマ照射は、止血に有効で、上皮組織の再生を促進することから、炎症性皮膚疾患の治療への応用が期待されている。一方、光学顕微鏡レベルでの検討が行われてきているが、電子顕微鏡レベルでの、系統的な検討は行われていない。本研究では、プラズマ照射による細胞内小器官や細胞外マトリックスへの効果を、超微形態学的に捉え、分子メカニズムとしての理解へと展開する。本年度は、以下の2項目について研究を行った。なお、実験は名古屋大学のプラズマ医療科学総合拠点と産総研のサテライト拠点『プラズマ医療分子生物科学・応用拠点』における装置・技術の協力を得て行った。 1. プラズマ照射による細胞、組織、血液への分子形態学的影響の検討 結果:ラットの背部皮膚に低温大気圧プラズマを照射したところ、止血をするのに十分な照射の範囲では、細胞膜、細胞内小器官、核および細胞外マトリックスに、ほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。 2. プラズマ照射による創傷治癒過程における分子形態学的変化の検討 結果:ラットの背部皮膚を切開後、電気凝固ならびに低温大気圧プラズマ照射により止血し、経時的に形態変化を観察した。電気凝固では、表皮の角質細胞と真皮の線維芽細胞の細胞死が観察されたのに対し、低温大気圧プラズマ照射では細胞死は観察されなかった。また、電気凝固では、細胞外マトリックスのコラーゲン線維の形態変化が観察されたのに対し、低温大気圧プラズマ照射ではコラーゲン線維の形態変化は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は名古屋大学のプラズマ医療科学総合拠点と産総研のサテライト拠点『プラズマ医療分子生物科学・応用拠点』における装置と技術の協力を得て行っているため、いろいろな情報を共有して、緊密に打合せを行いながら、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ照射による治療効果判定基準となる指標を探索するため、以下の2項目について検討する。 1. プラズマ照射による創傷治癒過程におけるガレクチン発現への影響の免疫組織化学的検討:創傷治癒の過程で発現誘導されるガレクチンについて、本研究者はその局在を免疫組織化学的に検討することで、その役割を明らかにしてきた。さらに、プラズマ照射で得られる良好な創傷治癒過程におけるガレクチンの発現の変化を免疫組織化学的に明らかにする。 2. プラズマ照射による細胞内タンパク質の糖修飾 (O-GlcNAc化) への影響の検討:細胞内タンパク質に対する放射線照射の作用には、糖修飾 (O-GlcNAc化) を増加させることが知られている。O-GlcNAc化に注目し、プラズマ照射に引き続いて生じる「細胞内タンパク質の翻訳後修飾への影響」を生化学、及び組織化学的に検討して、変化が顕著な糖タンパク質を明らかにする。 研究を遂行する上での問題点およびその解決策として、以下の事が考えられる。市販の抗体を入手できない場合には、抗原とするペプチドの合成、抗体作製を業者に委託する。また、免疫染色によるタンパク質の特異的な検出が困難な場合には、固定条件、染色条件を変えたり、賦活化などを行う。また適宜、異なるエピトープを認識する別の抗体を用いて検討する。
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