研究領域 | プラズマ医療科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
25108517
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大矢根 綾子 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (50356672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザー / リン酸カルシウム / バイオミメティック法 / インプラント / 過飽和溶液 / バイオミネラリゼーション / 表面処理 / コーティング |
研究概要 |
本研究は、基材表面にリン酸カルシウムを簡便かつ迅速に形成させるための液相レーザープラズマ技術を開発することを目的とする。当該年度は、歯科や整形外科用インプラント材料として有用なポリエチレンテレフタレート、チタン金属、コバルト・クロム合金、および焼結水酸アパタイトの基材に対し、液相レーザープラズマ技術を適用した。具体的には、上記の各種材料基材をリン酸カルシウム過飽和溶液中に浸漬し、同基材の表面に非集光の低エネルギーパルスレーザー光を種々の条件(波長、エネルギー密度、照射時間)で照射した。以上の処理による基材の表面構造変化を走査型電子顕微鏡観察、エネルギー分散型X線解析等により調べ、以下の成果を得た。また比較として、従来の気相プラズマを利用したリン酸カルシウム形成法についても検討を行った。 ①レーザー光照射条件を最適化することによって、上記のいずれの基材の表面にも、照射後5分以内にリン酸カルシウムを形成させることができた。 ②使用波長における基材の光吸収性に応じて、リン酸カルシウム形成に有効なエネルギー密度範囲があることが分かった。 ③本液相レーザープラズマ技術においては、紫外光レーザーだけでなく、基材によっては可視光レーザーも利用可能であることが判明した。 ④液相レーザープラズマ処理による基材の表面酸化反応(金属材料の場合)と局所加熱効果によって、リン酸カルシウムの形成が促されると考えられた。 以上のように、本液相レーザープラズマ技術が、高分子材料だけでなく、金属材料やセラミックス材料にも適用できることを示し、歯科用インプラント材料等の新しい表面改質技術としての可能性を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初計画の通りに研究を進め、本液相レーザープラズマ技術においてリン酸カルシウム形成を支配する条件因子(波長、エネルギー密度、照射時間)、およびリン酸カルシウム形成機構を基礎的に明らかにするとともに、適用可能な基材の種類を拡大することができた(研究実績の概要参照)。中でも、歯科インプラント材料として既に臨床応用されているチタン金属およびコバルト・クロム合金への適用を確認できたことは、実用上意義が大きいと考えられる。 これらの成果を多数の学術会議や、本新学術領域の関連行事(公開シンポジウム等)、論文等において発表した他、次年度開催の国際会議での発表も既に4件予定されている(うち1件は国際会議における招待講演)。また、本成果を含むこれまでの成果に対し、平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞の受賞が内定した(受賞日:2014年4月15日)。 以上の状況から、本研究課題は当初研究目的に対し、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本液相レーザープラズマ技術のさらなる技術向上(適用可能基材の拡大、リン酸カルシウム膜への薬効成分添加による機能付加など)を図っていく。また、計算科学的手法を取り入れ、固液界面におけるプラズマ反応に関する基礎的な考察を進めていくとともに、培養細胞を用いた膜機能のin vitro評価等により、医療応用に向けた生物学的検討も進めていく。得られた成果をまとめ、本液相レーザープラズマ技術の歯科医療における有用性を示す。 なお、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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