研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108702
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浅井 禎吾 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60572310)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天然物 / 二次代謝物 / 糸状菌 / 休眠遺伝子 / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究では、新たな生合成マシナリーを想起させる骨格や修飾様式を有する多様な新規天然物を、糸状菌ゲノム上に数多く存在する未利用生合成遺伝子のエピジェネティック (後天的) な活性化により創出することを目的とする。初めに、これまでに最適条件を確立している、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤およびDNAメチル化酵素阻害剤条件を用いて、昆虫寄生糸状菌、植物内生糸状菌およびChaetomium属菌を網羅的に探索し、多様な新規骨格天然物の取得を目指した。その結果、Chaetomium indicumより、多様な新規芳香族ポリケチドの取得に成功した。また、二量体構造を有するchaetophenol DやE、多環式のchaetophenol C、スピロラクトン構造を有するspiroindicumide AやBなど、新規骨格を有する化合物が多く見られたことより、本手法の有効性を示すことができた。次に、安定同位体標識化合物を用いた取り込み実験により、これら芳香族化合物の生合成機構を推定し、共通中間体を与える非還元型ポリケチド合成酵素をコードする遺伝子であるpksCH-2の同定に成功した。さらに、pksCH-2は通常の培養条件下ではほとんど発現していない休眠遺伝子であり、HDAC阻害剤添加によるヒストンアセチル化レベルの上昇をともなうエピジェネティック制御により発現が誘導されることも示した。植物内生糸状菌や昆虫寄生糸状菌についても、いくつかの菌において、阻害剤を用いた二次代謝の活性化に成功しており、現在新規物質取得のため、分画を進めている。今後、さらに多様な微生物資源に対して本手法を適応することで、より多くの新規骨格を有する新規天然物の発見を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を用いた二次代謝活性化法を、多様な糸状菌 (遺伝子資源)に適応することで、ユニークな骨格を有する化合物を含め、数多くの新規化合物の取得に成功しており、本手法の有用性を示すことができた。さらに、休眠遺伝子にコードされる新たな生合成マシナリー発見にも有効であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) 阻害剤だけでも、糸状菌 (遺伝子資源) を変化させることで、多様な新規天然物を取得できることを示してきた。一方で、遺伝子発現解析により、発現が誘導される遺伝子は限定的であることもわかってきた。これらのことを考慮して、以下の2つの点を重点的に行う。(1) より多くの植物や昆虫を糸状菌分離源とすることで、より多様な遺伝子資源を取得する、それらに対して二次代謝活性化法を適応することで、新規天然物、特にユニークな骨格を有する化合物の取得を目指す。(2) これまでに、糸状菌二次代謝活性化剤としての有効性を示してきたHDAC阻害剤やDNAメチル化酵素阻害剤とは異なるエピジェネティック因子をターゲットする酵素阻害剤について検討を行う。全体的な転写活性化を期待して、ヘテロクロマチン形成に関わるヒストンメチル化酵素やヒストン脱メチル化酵素阻害剤や、ヒストンアセチル化酵素の活性化剤等を検討する。さらに、最近、特定のHDACも二次代謝物の生産に必須であることが明らかになりつつあることを考慮し、選択性の高いHDAC阻害剤についても検討する。さらに、ターゲットの異なる阻害剤に関しては、併用時の効果についても検討し、より多くの遺伝子発現を誘導できる手法を確率する。
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