研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
25108703
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サーチュイン / 二次代謝 / 糸状菌 |
研究概要 |
A. nidulansでは、sirtuin(SirA)の阻害によりヒストンのアセチル化レベルが増加し、二次代謝系遺伝子の活性化が起こる。そこで、この活性の阻害を指標に天然物をスクリーニングした。組換えSirAタンパク質(rSirA)は、大腸菌を用いて発現させ精製した。200種の糸状菌を10 mlのポテトデキストロース培地およびYeast/Malt extract-sucrose培地を用いて培養したものをそれぞれ酢酸エチルを用いて抽出した。これをターゲットとし、SIRT1/Sir2 Deacetylase Fluorometric Assay KitおよびHPLCを用いた反応産物(nicotinamide)の定量によって、rSirAの酵素活性の阻害剤のスクリーニングを行った。現在までに、400の抽出物をスクリーニング源とし、49種の培養抽出物(38菌株)にrSirAによるヒストン脱アセチル化活性の阻害作用を見出した。さらに、これらの菌の培養のスケールアップを行いrSirAの阻害活性を検証し、複数の当該活性を有する培養液が得られた。これは、通常発現していない二次代謝系が覚醒された培養抽出物ライブラリーとして有用である。また、これらの化合物を定法に従い精製・構造の決定をすすめている。また、本菌の転写因子であるAmyRとCreAによる新規生合成マシナリー制御機構についての研究を進めた。その結果、これらがステリグマトシスチン生合成遺伝子群だけでなく多くの二次代謝系の発現抑制にも関与すると考えられた。現在、これらの因子により制御される生合成マシナリーの特定をすすめており、これによって、AmyRとCreAによる転写調節の分子機構を解明可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もっとも重要な課題である糸状菌培養液からのカビSirAの活性阻害剤のスクリーニング系を構築し、その部分精製まで到達した点は、当初の計画を上回るものである。一方、AmyRとCreAによる二次代謝系遺伝子発現制御の分子機構に関する研究は、これらによって制御される遺伝子の網羅的解析に成功した点で一定の評価はできるが、その後のブレイクスルーを迎えることができず、やや停滞した。これらを総合的に評価し、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
1.スクリーニングして得られた糸状菌培養液から、当初の計画通り、最低でも1種について、定法に従い精製し、構造を決定し、汎用型の生合成マシナリー発現誘引物質としての利用を検証することを目標にする。 2.AmyR、CreAによって制御される二次代謝系遺伝子と培養液のHPLCプロファイルの相関を明らかとする。具体的には、HPLC上で見られる化合物ピークのうち、これらによって発現抑制を受けるものを同定する。これにより、これら転写因子が制御する二次代謝産物の生合成マシナリーが明らかとなる。 1,2を通して、通常は発現していない潜在的な生合成マシナリーを人為的に発現させる技術の構築を目指す。
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